インピーダンスマッチング(その2)
前回に続いて、インピーダンスマッチングの崩れたときの反射について考えて見ましょう。
伝送線は、もしその長さが無限大であったら、その入力端からのぞき込んだときは特性インピーダンス(実数)だけが見えます。
50Ωの同軸線ならば、50Ωの抵抗と同じに振る舞うということです。

まず右の図のような回路をブレッドボード上に作りました。
高速のオペアンプで立ち上がりの速いパルスを送り出します。
同軸ケーブルは 50 Ωのテフロンのもので、 13m あります。 短縮率は 0.7 程度ですので往復で 123 ns の時間がかかりますから、その辺りを観察します。
プローブの位置は赤い矢印の点に取りました。
終端を、解放と、47Ωと、ショートの3種類で見てみます。 本当は、ドライブ側もいろんな組み合わせをした方がいいのですが、基本的なところを押さえれば後は推測できるので、とりあえずこのままとします。

それでは見てみましょう。 解放したら右のようになりました。
解放端まで到達した波は、行き場が無くなって戻ってきますが、行く波と帰る波が重なって2倍になります。 それが送信端まで到達するには 122ns かかりました。 予想通りです。
250ns のところにわずかに持ち上がった波形が見えますが、2往復した結果です。
2つ目の立ち上がりは少しなだらかになっていて、ケーブルでの周波数依存の高周波損失があることを伺わせます。
もし仮に、ケーブルの途中にオープンなどの不整合点があれば、そこまでの距離が分かり、同時にどの程度の不整合がそこで発生しているかも分かります。
こうやって故障点を知る方法を TDR (Time Domain Reflectometry) といいます。 この図を TDR として読み解くと、13m の所に断線があることが推定できます。

47Ωで終端すると右のようになりました。
50 でないので、120ns のところからちょっと小さくなっています。 でもよく整合が取れています。
終端抵抗が 50Ω とオープンの間のどこかにあると、波形は上の絵とこれとの中間になります。

右の図はショートした場合です。
レスポンスは予想通りです。
下がった位置で少し電圧が残りますが、これはケーブルの損失分です。
終端抵抗が 0 から 50 の間にあると、波形はこれと、この上との中間になります。
高速のパルスを伝送線で送るときは、受電端で必ず伝送線のインピーダンスで終端しないと波形が乱れます。
送信側では、負荷は特性インピーダンスの純抵抗だと思ってドライブすれば間違いありません。
また、受信端からの反射が少しはあるでしょうから、送信端も特性インピーダンスと同じ値の信号源抵抗を持たせることを行います。
受電端での波形をお見せしませんでした。 想像できますか?
オープンの時は、送信開始後 60ns からいきなり2倍の電圧が見えます。 送信側の整合が取れていないと、その時点から 120ns 後に送信側の不整合に合わせた上下のふれが見えます。 240ns 後にも2往復目の波が来ます。
整合が取れているときは、60ns に1倍の電圧となり、そのままきれいに収まります。
ショートしているときは、いつも 0V です。
もし、例えば 20Ωの様な値だと、50Ωとの電圧分割した 0.29 倍が出た後、120ns 後に送信端のマッチング状態次第の波が戻ってきます。
(ですから、送信端も合わせておいてください。)
[関連記事]
インピーダンスマッチング (その1)
インピーダンスマッチング (その3)
「トランジスタ技術」2019年4月号 pp54-57
[蛇足]
上記でちょっと触れた TDR ですが、TDR の信号源はステップ信号ではなく、短いインパルスを使うこともあります。
ステップ信号の場合は、周波数ドメインに変換するときの FFT で若干の困難が伴います。 終わりがないですから、非常に低い周波数まで含まれてしまい、窓の設定が困難になるからです。
それに比べ、短いインパルスならば所期の目的は達成できますし、FFT の窓の設定も容易になります。
