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インピーダンスマッチング(その1)


インピーダンスマッチングには2つの意味があります。 最大電力を負荷に供給するということと、高周波での反射をなくすということです。
今回は前者の、最大電力の伝達、ということに注目してお話ししましょう。


右の図は、一番単純な形の電力伝達の場合を表しています。
正規化していて、信号源が1Vを発生し、信号源インピーダンスは実数項のみで、1Ωとしています。
このとき、負荷抵抗が変動したとすると、その負荷に吸収される電力はどのように変化するでしょうか。
グラフはそれを表しています。

1Ωの時に最大となり、上側では比較的なだらかに低下します。 下側ではどんどん悪くなります。 (逆数を取れば上側と同じ形状ですけど)

注意:  いまは、信号源抵抗が固定で、負荷が変動しているケースですが、逆に負荷が固定で、信号源抵抗が変化する場合は、信号源抵抗が0のとき、負荷に伝達される電力が最大になります。  このときは「マッチング」という概念はありません。 よく間違われます。
Wikipedia の「インピーダンス」の記事(2008年4月現在)もここのところが間違っています。


信号源が純抵抗の時は楽でした。 リアクタンス分を持ったらどうなるでしょうか。

右の図では、信号源の R を 1、X を -1 として、負荷のインピーダンスを変動させたグラフです。  負荷は2次元ですから電力を Z 軸にとって3次元のグラフになります。
負荷のインピーダンスが信号源インピーダンスの共役複素数になるときに最大電力が伝達されます。

考え方としては、j の項が + と - で打ち消し合うから、電流が最大になる、ということです。  同じ意味ですが、リアクタンス同士が直列共振回路となり、筒抜けで伝達できるので、R 同士だけを見ればよいということもできます。

実数部分と虚数部分が同じ程度の時はそうでした。  もう少し複雑になって、虚数部分が実数部分に比較してとても大きいときはどのような振る舞いをするでしょうか。


それを見たのが次の図です。
10 倍にしてみました。
まるで烏帽子のような形になります。 このように、信号源の虚数項(の絶対値)が大きいときは注意が要ります。  負荷の側では、まず虚数項を正確に合わせないと電力は格段に減衰してしまいます。 

ところで、ちょっと視点を変えて、リアクタンスが 10 から少しずれた線をたどってみてください。  負荷抵抗が 1 よりも大きいところで電力が大きくなることに気づいたでしょうか?
負荷の実数項は信号源の実数項と同じか、リアクタンスに誤差を見込むならやや大きめに取るといいでしょう。

それでは、逆に実数項が虚数項に比べて大きいときはどうなるでしょうか。
実数項を10倍にしてみましたところ、面白い結果が出ました。
右の図のようになります。

実数項さえ合わせればいいのですね。 虚数項は大まかにあわせさえすれば良く、その付近で変動してもほとんど効きません。

通して考えますと、信号源の X と R の比が重要な要素なのですね。 この比のことを Q と呼びます。 すなわち

   Q = X/R

というわけです。 
Qが大きいときは共振回路はするどく反応します。 少しのずれはただちに減衰を意味します。
ですから、Q が大きいときは周波数帯域が問題になることもあります。
-j の項と +j の項はωに対して絶対値が逆に動きますから、周波数が動くとマッチングが崩れるというわけです。


[関連記事]
インピーダンスマッチング (その2)
インピーダンスマッチング (その3)
「トランジスタ技術」2019年4月号 pp54-57


[余談]
Q は Quality Factor 又は Quality Figure が語源です。  キャパシタやインダクタはリアクタンスを持たせる素子ですから、部品としてはレジスタンス分は設計上余分な要素となります。  ですから、X が R に対して大きいほど品質(Quality)が良い、という概念です。