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Zobel Network で完全無反射フィルタ


このサイトの Forum に来られた方からヒントをいただきました。  以前の「無反射ガウシアン LC ローパスフィルタ」の改良です。 Zobel Network を数珠つなぎにして、下の図のような回路を構成しますと
  S11=S22=0 (-∞dB)
  S21 は -30dB まで Gaussian ±0.1dB
という特性を実現することができます。


S21 は5次のベッセル(黄色の細い線)とほぼ同じ特性です。 比較できるように w=1 で -3dB にそろえてあります。
共振回路も使っていますので群遅延特性の右の方にばたつきがあります。  これは w=1.5 辺りの特性を良くしたことの犠牲ですが、S21 がずいぶん落ちた場所ですので問題にはならないと考えています。

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ちょっと Zobel Network の解説をしておきます。 
右の図の上半分を見てください。
ブリッジの形をしています。  右上のエレメントが Z で、左下のエレメントが Z0^2/Z ですから、A 点の電位と B 点の電位はどんな周波数/位相でも同じになります。
ということは、この2点間にどんな値のインピーダンス素子をつないでもそこには電流は流れません。  回路全体に何の影響もない、ということです。
もう一つ、Zin を計算しますと、どんな周波数でも Z0 になります。  (「無反射ガウシアン LC ローパスフィルタ」のページの3番目の図はこのことです。  Zany を無限大にしたとき。)
面白いですね。 このブリッジは、考案した人の名前をとって「Zobel Bridge」といいます。

このブリッジのトポロジーをそのままにして書き換えます。 下側の図です。  Q の位置には何を入れても良かったので仮に Z0 を入れてみます。 Zin は元々 Z0 でした。  Q に Z0 を入れ信号源を Z0 とすると、左右が対称になって、P に何を入れても、出力端子から中を覗き込んだインピーダンス Zout は Z0 になります。
つまり、P、Q を Z0 にすると両側から同じインピーダンス Z0 が見えることになります。

この下側の回路は、まあ Zobel Bridge なのですが、Zobel Network とか Bridged-T という名前で呼ばれることが多いようです。  えーと、上側の図では Zany が Bridge ですが、下側では Z が Bridge になりますので「橋」の意味が少し違います。

で、Z0 を1として、Z にインダクタンスを入れると両側無反射の1次のフィルターになります。  このとき、 1/Z の位置には L と同じ値の C を置きます。 また、Z の中に R があるときは 1/R の抵抗にします。  さらに、並列と直列を逆にしてやります。

ところで、以前の記事「ガウシアン・フィルタ」のページの下の方に、 1次のフィルタを多段重ねると次第にガウシアンに近くなると書いておきました。
それで、この1次のフィルタを5段重ねてみました。  しかし、この方法ではなかなか近づく速度が遅いので、5段ではまだだいぶ離れています。  速やかに落とし込むべく急峻なディップを持つフィルタを追加で入れて、その下がっていくカーブをガウシアンのカーブに見立てることにしました。
この共振回路は2段にして、共振周波数と Q の値を変化させて、ガウスカーブからの誤差が少なくなるように収束させました。  -30dB までは ±0.1dB に収まっています。
実際に作成する場合は L の線に抵抗分(r)があるでしょうから、その逆数 (Z0^2/r)に相当する抵抗を C に並列に入れてください。

この方法の欠点はやたら部品数が多くなることでしょうか。
少なくするべく、最後の2ステージは共振回路ではなく、5段目までと同じにすると次のようになります。  w=1.5 あたりで最初のものより GD が下がりますし、S21 の切れも劣化しますが、この方がシンプルですね。  L と C は 0.32265 です。

右側の群遅延(緑)のカーブですが、おもしろいことに L の値が同じなら段数が増えても変化しません。  ただし、段数が増えると左の S21(青)の線が左に動いて行きます。  左へ動いた量を元の位置へ戻すためには L を小さくしますが、そのとき右に動かす量だけ緑の線も右に移動します。  100段ぐらいにすると w=6 でも 0.8 にしか下がりません。 極限まで進めると遅延線になるわけです。
青の線の右下の裾は、段数が増えると下に曲がって赤のガウシアンに近づきます。

丸い棒の上にアルミフォイルを貼って、長さ方向に一本スリットを入れて周回方向にワンターンができないようにしたうえで、コイルを巻いていくとLとCが分布定数的な構造になります。  これが Delay Line (遅延線)です。 コイルのLと、線とアルミフォイルの間の容量がちょうど逆数になるように設計します。
このとき、コイル線の被膜が持つ損失(G)も、コイルの線が持つ損失(R)の逆数にするとうまくマッチしますが、この2つは周波数の関数になりますから上手な設計が必要になります。


下記参照の Forum では3段+イコライザ1段を使って、3次 Bessel そのものの特性を実現した例(No.1091,No.1095)が出ています。 ただし、その例では損失があります。 その方法はもっと高次にも拡張できますが、損失はさらに増えます。




[参照]