無反射ガウシアン LC ローパスフィルタ - その2
昨年の8月の記事( ==> これ )で吸収フィルタを設計してみました。
そのとき、わずかに残った懸念がありました。 部品定数の検索は、人の手で探したわけですので、ずっと離れたところにもっと良い条件の定数の組み合わせがあるかもしれないことです。 5次元空間ですから、別のポケット(部分極小)があってもおかしくないのです。
その懸念を払拭すべく、かなり広い範囲をコンピュータで検索させてみました。 幸い PC も速いものに入れ替えていますから一日ぐらい連続で計算させれば何か見つかるだろうという算段です。
結論から言いますと、「前回の人手の検索はかなり良い結果だった」、ということです。
まあ若干の改良がありますし、コンピュータでの検索をどうやったかということも併せてこの記事を書きます。

回路はこんなものでした:
拘束条件として L1=L2=L8 を使いました。 部品管理のしやすさを考えてのことです。 この条件で結果が悪ければ L2 を独立させようと思いましたが、そこそこいい結果になりましたのでそのまま使います。 検索の次元が下がるので楽になりますし。
次元は5つです。 すなわち L(L1,L2,L8)、C1、C9、R1、R8 です。 R9 は高い周波数で Zcomp を 1 にするためには 1 でなければいけないので、それに固定します。
この場合は、多変量解析の手法はうまく働かないと思います。
それで、この5次元空間をコンピュータでつぶさに調べていくことにします。 全検査の結果を逐一出力しても人の目では見きれないですから絞りますが、何をもって「合格である」とするかという条件が要ります。 目標は、S11 が小さく、S21 が目標カーブに近い、ということですから2つあります。 二兎を追います。
どちらも遷移域が問題ですので、計算を単純化するために w (角周波数)を 0.3 から 3.78 の範囲に絞り、プロットも少なくして 23 点とします。 プロットの位置は、w=0.3 からスタートし、10^(1/20) 倍で刻んでいって、S21 が-50dB を下回る点までです。
[条件1: S11]
1セットの定数の組み合わせで、各周波数で S11 を計算しそれらのうちの最大値が条件値を超えるセットは棄却し、表示しないことにします。
[条件2: S21]
S21 の方は少しやっかいです。 目標のカーブは7次のリニアフェーズフィルタ (Linear Phase, Symmetrical Chebyshev Equiripple Error Filter, error 1%) としました。 理想ガウシアンカーブはこの回路構成では無理なことが分かっていますから使いません。 また、Zcomp の補償回路が、部分的に次数を上げてくれますから、入力部と出力部で2次分だけ高くします。 もちろん遷移域の上の方では R9 や R1 が効いて次数が低い方にずれていきます(スロープが緩やかになる)。
目標カーブからの誤差量は、23 プロットの合計を取りますが、単純和ですと不公平ですから、重み付けをします。 重みは目標カーブの減衰量とします。 すなわちたとえば -20dB の位置なら、dB で表した誤差を 1/10 にしました。
重み付き誤差量の和が条件を超えたセットは棄却します。
条件1と条件2が排他的になって、二者択一になる可能性がありましたが、結果的にはそれほど厳しくありませんでした。 そこそこまで両者とも連れ合って良くなります。
理由は、条件2を決定する定数が C1 と L1、L2が主なものであるのに対し、条件1は C8、R8 が主張するからです。 両方に同時に強い影響を及ぼすパラメータが無いのが幸いしました。
二者択一になるのは S11で 0.1dB の桁以下になってからですが、そこからは S11 を優先させました。
各定数をかなり広い範囲で指定し、網の目を少し広くして検索をしました。 いくつか引っかかってきましたが、幸いなことに離れたところに離散的なポケットはできてはいませんでした。
範囲を狭めて、網の目を細かくして検索を行い、条件値を絞っていって、有効数字4桁の定数を確定しました。
| 今回 | 前回 | ||
| L1= | 0.7728 | 0.77 | |
| C1= | 0.8062 | 0.83 | <== 最大変更点 |
| L2= | 0.7728 | 0.77 | |
| R1= | 0.2559 | 0.26 | |
| C9= | 0.4890 | 0.48 | |
| L8= | 0.7728 | 0.77 | |
| R8= | 2.279 | 2.3 | |
| R9= | 1.0 | 1.0 |
この組み合わせで S11 の最大値は -25.9dB になります。 前回は -25.3dB でした。



前回よりも S11 も S21 も少し改善されていますが、大幅ではありません。 S21 と群遅延は5次のリニアと6次のリニアの中間程度の特性です。
別のポケットがないことが確認できましたのでほっとしています。
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