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ICOM IC-R75 改造記

             

ICOM のジェネラルカバレジ受信機 IC-R75 を購入しました。
これは 30kHz から 60MHz まで、CW、 SSB、 AM、 FM を受信できるすぐれものです。 10 万円程度ですので VFO がひとつしかないなどの制限はありますが、私には充分すぎる性能です。 昔やっていた SWL/BCL をちょっと復活したくて買いました。

いい受信機ですが、いくつか不満もありますので改造することにしました。


まず最初に、「こんなだったらいいのに」というリストです:

1. 音質を改善したい
オーディオセットではないですからやむを得ない面もありますが、もっと良い設計ができるはずです。 長く聞いていると疲れてくる音質です。 スピーカの f0 が 670Hz で、AF のローパスフィルタのカットオフは設計の間違いもあって 2.4kHz ですから、非常に狭い周波数帯しか通ってこないのです。 カーカーというひどい音になっています。

2. S-AM (同期検波)をきちんと動作させたい
これは多くの方が指摘しているとおりうまく動作していません。幸いなことに Web の forum での 書き込み記事が助けとなって改善が可能です。

3. 中波の感度を改善したい
現状は中波にアッテネータが入ったままになっています
これは少しの改善ならすぐに行えます。

4 同期検波は片側サイドバンド検出 (Exalted Carrier Single Sideband) ができたらいいのに。
これを期待していて買ったのですが、半分期待はずれでした。  夜間に混信があったり、位相ずれでサイドバンド間が相互干渉したりしたときに、片側の側波帯だけ取り出すことでうまく受信するのが常套手段でしたのでがっかりです。  SSB モードでやるしかありません。
大がかりな回路変更になりますので、これは改善できません。

5. スリープタイマの大きなビープ音を鳴らさないようにしたい
どういう設計思想かまったく理解できませんが、電源が切れる直前に5回ビープがなります。  寝ようとするものにとっては使えない機能です。 ファームウェアの中身になりますので残念ながら変更はできません。
[2011.2.20 追加記入]
ビープの信号線を切断します。


6. 長波でもちゃんとプリアンプが動作したらいいのに
アンプとしては動作しなくなり、60kHz 以下になりますと逆に減衰器として働くぐらいに劣化します。  私は長波は使わないので改造はしませんが、原因と思われる点を書いておきます。

7. AGC OFF でも S-meter を振らせたい
AGC を OFF にすると S-meter が振れません。 回路を追ってみますと S-meter 用のバッファアンプは AGC 電圧をもらっており、その前の AGC 電圧を作っている回路に、 MPU からシフトレジスタを通って AGC 選択の制御が入っています。 改造は困難です。

8. SSB を Wide(3.3kHz) で受信しても音量が下がらないようにしたい
AGC が ON の状態で SSB を受信して、帯域を Normal (2.4kHz) と Wide (3.3kHz) を切り替えてみると、Wide の時に音量が 6 - 10 dB ほど下がります。 AGC を OFF にすると変化しません。  広帯域で AGC に入力される信号量が大きくなるためゲインが下がり、その割には音量として耳に入るサイドバンドのスペクトルの入力レベルは同じである(当然)のが原因のようです。  確認のために RF ゲインを下げてみると切り替えても音量は変わらないので当たりのようです。  ICOM にメイルで問い合わせたところ、「基板の不良と思われるので修理する。 お金がかかる」という的をはずした返事だったのでそのままにしています。  買ったばかりなのにお金を取られてはかないません。

9. 強い信号で音が歪んでしまわないようにしたい
S9+20dB 程度の信号を受けるとバリバリという音が混じってしまいます。  これは検波からパワーアンプに至るユニット群のレベル配分がうまくなされていないためです。 これが一番大きな不満です。

10. 低周波フィルタにある設計の間違いをちゃんとなおしたい
低周波フィルタは 3kHz にカットオフがあるバタワースを意図しています(解析すればすぐ分かります)。  設計では信号源インピーダンスを 0 と仮定してあるにもかかわらず、実際の回路ではとても高い値になっています。  同じ間違いが FM のハイパスフィルタにもありますが、こちらは軽微ですのでそのままとします。

11. AGC Off で 強い AM 信号が歪む
AGC を Off にすると強い AM 信号に歪みが見られ、極端な場合は無音に近くなります。  これは AM 検波の直前に入っているバッファが飽和しているからです。

12. その他
バッテリーの寿命、パワーパックの電圧、等について若干の記述をします。


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改造内容:

1. 音の改善
2つの改善点があります。 ひとつはなんと言ってもスピーカです。 しかし、まだ交換できる新たなスピーカが見つかりません。  2つ目は Low-pass フィルタの変更です。 これは下のリンク集の Kiwa のサイトでも述べられています。

1.1 スピーカ
組み込まれているスピーカは、右上の写真に見えるように、おもちゃに使われるような性能の悪いものです。  平板な振動板で、 4cm では良い音を出すことは不可能です。  低い音は無くなりますし、中域はピークを持った暴れた特性になります。  マグネット部分に 8 Ω 2 W の文字が印刷されていますが、このボイスコイルが 2W に耐えられるとは思えません(1パルスならいいかも)し、2W ほうりこんだら、 ボイスコイルは磁界から飛び出してしまって非直線領域に入ってしまうことは確実です。 このスピーカは交換しかありません。
4cm という条件では音質がいい物を見つけることは困難ですが、それでももっと良くなるはずと町に出て探してみました。  比較的しっかりしたものがありました。 PC の外部スピーカに使う、フリーエッジのものです。  まあまあ良い音がします。 右の写真のものですが、残念ながら奥行きが深くて R75 の箱には入りません。
今も探索中です。 底の部分が大きく空いていますので、大きなスピーカを下のカバーに着ける方法があるかもしれません。  パワーアンプは 4Ω でもドライブできますが、その時はカップリングキャパシタは取り替えて、プリント配線は補強することになります。
外部にスピーカをつなぐと良い音がしますので、しばらくはそれで我慢です。

[3/10/2007 追記: 近所の電器量販店で iPod のアダプタスピーカがセールで 500 円でした。 外形寸法が丁度合いましたので買ってきて分解して取り替えました。  右の写真は分解しているところです。 前面は CUI に似ていますが、 直径は少し大きく、裏のマグネットはもっとちいさくなっています。 f0 を測ってみたら 180Hz でした。  取り外した、元のスピーカの f0 は 670Hz でした。 300 - 600Hz は母音にとって重要な周波数帯(第一フォルマント帯域)ですので 670 は問題でしょう。  満足とまでは言えませんが、交換後は以前よりはるかにいい音になりました。]

[6/29/2014 追記:
Dayton の CE40P-8 1-1/2" を輸入してオフラインで試験してみました。
元のスピーカよりずっといい音がします。 また、上記の変更したものとは同じ程度の音質です。  Dayton のスピーカはダイヤフラムが 3.5cm で、グリルより若干小さいのでマウントがやりにくいでしょう。 交換はしませんでした。]


1.2 低周波フィルタ
検波の直後で、DSP やボリュームに行く前の所に 3kHz のバタワースフィルタが入っています。 24dB/oct の設計になっています。  外国語の放送を聞くときは sh や ts のような子音が比較的重要ですが、3kHz はそれをカットしてしまい明瞭度が低下します。  中間周波のフィルタと違い、選択することができません。
切りたいときは中間周波で切れるようになっているのですから、ここはもう少し広くしておきます。  AM は Wide を選択すると 15kHz で通ってきますから、7kHz 位まで広くてもいいと思いますが、DSP が混乱するといけませんから 4.4kHz 程度にとどめます。  右の回路変更です。
強誘電性のセラミックキャパシタは私の別ページもう一つのページで紹介していますように、 フィルタに使った場合はヒステリシスによる歪みをもちこみますからフィルムキャパシタを使います。
非常に小さい場所の作業になります。 困難な場合は別に小さな基板を作ってフィルタ全体を入れ替えることもできます  ( R75Fil.htm のページの一番下を参照)。  その時は、入力として取り入れる信号は、図の左端にある R の下側か、2つ目の R の下側から取れます。  また出力は J1221 のピン 1 (バッテリ寄り)にささっている線(コネクタではない)につなぎます。

これに伴って、スピーカドライブのパワーアンプの入力位置にあるハイカットフィルタの定数を変更しておきます。
1次のローパスでカットオフ(-3dB)が 3.4kHz になっていますので 7kHz 程度まで上げました。 右の図の通りです。


1.3 スピーカのマウント
フロントパネルに開いている音が通る穴はかなり狭いスリットになっていますので、ルータを使って 2 - 3 倍の幅に広くしておきました。  スピーカの写真に見ることができます。


2. S-AM 検波
この部分の修正は2つあります。 ひとつは AGC の時間を伸ばすこと、今ひとつはチューニング時とチューニング後とでスピードを切り替えることです。
下のリンクの Rado の記事を参照してください。

ピン 4 は 10uF が入っていますが、さらに 100uF-470uF を加えてやります。 これで AGC 時間が伸びます。  私は 220u にしましたが充分長いように感じます。

Dual speed はピン 23 に 22uF - 47uF を入れてやれば実現できます。 元は直接グラウンドに落ちており、チューニング時の設定になっています。 
Rado 1 の改造はそこまでですが、それではチューニングの動作がやりにくくなります。 私はさらに放電回路を入れてチューニングをしやすくしました。  トリガは PST1 という信号からもらっています。 これは PLL の周波数設定レジスタへの書き込みのストローブです。  パルス幅が 1.5us しかなかったので広げるための簡単な RC を入れました。
PC 板は熱を吸収しますのでピン 23 を浮かせる作業は注意が要りました。 絶対にピンを痛めないよう注意深く。

30W 程度の弱い半田ごてを使って熱によるダメージを避けるように指導している文書を見かけるときがありますが、それは逆です。  多層基板ですので、弱いこてでは長時間当てないと半田が溶けません。 必然的に温度勾配が少なくなり、周囲の部品の温度が上がります。  60W で温度管理の付いたこてを使って目的のピンの温度を急速に上げるのがこつです。  短時間ですから周囲の部品の温度が上がらないうちに作業が完了します。

ピンを持ち上げるときに半田が飛び散って目に入らないよう、安全眼鏡をかけてください。

ピン 23 は 「Blend」 と呼ばれていますが、その機能の詳しい説明は MC13122 のデータシートに書かれています。  MC13022 の姉妹製品です。
写真はフィルタと S-AM の改造後の模様です。 部品は接着剤で固定して振動しないようにしています。


[2/10/2007 追加

回路を再度左のように変更しました。

Rado 2.0 では、図中の 22u は 100u、330k は 100k-150k になっています。 

効果は上記のものと全く変わりませんでした。
この回路は C2240BL の hFE と VBE に依存するところがありますから、安定性の観点から上記の私の回路の方をお奨めします。]

[6/22/2014 さらに追加
Rado 2 はやや不安定で、チューニング時にピュピュという音がするので元に戻しました。
ただし、パルスを拡張する回路を簡単にしました。 MOSのゲート容量を使っています。]

3. MW のアッテネータ
アンテナリレーのそばにショートパッドがありますので、それを半田でつなぎます。これで 1dB 程度上がります。
近くに大電力の中波放送局があるときはやらない方がいいでしょう。 混変調スプリアスが増えます。

実は、このパッドショートだけではフィルタの負荷のインピーダンスが少し低くなって、特性が崩れます。 正しくやるには
 - パッドをショートする
 - 270 Ω 二つを剥がす
 - 剥がした一方に 820 uH のチョークをつける
 - 10 Ω を剥がし、100 Ωに交換する
ということをやります。 私はこちらをやりました。 3dB 向上します。
820uH の L の自己共振を測ってみましたら 2.5MHz で充分高いですし、デカップリングの 0.1uF との直列共振は 17KHz と充分低くなっています。  このデカップリングはチタバリですから電圧がかかると容量が小さくなり、温度が上がるとさらに小さくなります。  しかし 30kHz まではいかないので 820uH の値は適当でしょう。
フィルタの入力側は 330uH が使われていますが、このリアクタンスは 30kHz で 62Ω ですから小さすぎると感じます。


[2011.2.20 追加記述]
5. スリープタイマのビープ音
ビープの信号線を切断します。 場所は右の絵の通りです。



6. 長波でのプリアンプ
プリアンプに使われているバイパスキャパシタやカップリングキャパシタはすべて 0.1u になっています。 この値は、30kHz でリアクタンス分が 58 Ω になってしまう小さなものです。 右図でも分かりますが、23Ω のバイパスに 58 では動作しません。
赤い丸の印は多分犯人ではないだろうかと思われるものです。
また、入出力にある伝送線トランスの帯域についてもチェックする必要があるかもしれません。

これらの変更は行いませんでした。 理由は、長波を使わないことと、シールドケースの中にあって、作業が難しいことです。

ついでと言ってはなんですが、図の右端にある、スイッチング・ダイオードの右の 0.1u は、並列に 0.33u のチップキャパシタを入れておきました。  入れるのならばチップ型でないといけません。 でないと、リード線と 0.1u とで並列共振してしまいます。


9. 強信号での音の歪み
強い信号を受信すると、ひどい歪みが発生します。 RF ATT を入れると軽減することができますが不自然です。  信号をトレースしていくと原因はすぐに分かります。
各種検波のあと、信号形式選択スイッチ、フィルタ、DSP、低周波増幅、電子ボリュームコントロール、ミュートスイッチ、減衰器、パワーアンプ、 という順につながっていますが、このうちの低周波増幅のオペアンプでサチっています。
よって、このオペアンプのゲインを 4.4dB ほど下げ、ついでに AM と SSB の音量差を解消するために選択スイッチのところで 2本抵抗を追加して AM のみ 3.6dB 下げることにします。 合計 8dB です。  下げた分はパワーアンプの入り口の減衰器を調整して戻してもいいのですが、私はそのままにしました。
歪みは見事になくなりました。


10. 低周波フィルタの設計間違い
この 3kHz バタワースはゼロの信号源インピーダンスでなければ所望の特性が出ません。  ところが、アナログスイッチ周りの回路をよく見ますと、ちょっと問題があります。  モードによって異なりますが、信号源インピーダンスは次のようになります。 スイッチは 100Ω としました。
       FM    2.2k
       SSB  28.0k
       AM   23.5k
周波数特性を計算しますと右の図のようになります。 3kHz のつもりが、AM で 2.4kHz ほどに狭くなってしまっています。
対策として一番いいのはフィルタの入力位置にバッファアンプを入れることです。  次善の選択としては、特性が悪化することを妥協して、1.2で記述した変更を入れることです。  もっと詳しく特性を見たい方は ==> このページ にお越しください。  私はそのページの Case-4 を実装しました。
KIWA の改造は Case-2 に相当しますが、高域でだらだら下がりになるのでお勧めしません


11. AGC Off で 強い AM が歪む
AGC を OFF にすると、強い AM 信号が歪みます。 これは、中間周波と AM 検波の間に入っているエミッタフォロアのバッファが飽和するためです。  このバッファは AGC の整流を行うためにインピーダンスを下げたいので入れてあるものです。
AGC を切ると前段のゲインが大きくなって、ここへの入力が 7Vp-p 以上に大きくなるのですが、それが取り扱えません。

左の様に回路を変更しました。 ダイナミックレンジが 1.5 倍程度になって、 4dB ほどの改善になります。  またエミッタフォロアの設計が HFE の変化に対して不安定なものでしたので、バイアス点を若干調整しておきました。 220kΩ を動かしてエミッタが 6V になるようにします。


12. その他
フォラムの記事の中でどなたかが「リチウム電池が2ヶ月しか持たない」と言っていましたので測定してみました。 消費電流は 4uA です。  これは電源端子に 14V が供給されていない時にのみ消費されます。 CR2032 は 0.22AH の容量ですので、5年は持つはずです。  どうやら私の機械では問題はないようです。

電源に関してはもう一つ不思議なことがあります。
パワーパックの開放電圧は 19.8V あります。 負荷をつないだときは 17.7V で、リップルは 0.5Vp-p です。  これは明らかな仕様(13.8+-15%)違反ですが、、、、、   ちょっと調べてみましたが問題は無いようです。  安定化に使われている PQ30RV31 という LDO は 35V まで許していますし、発熱もそれほど大きくありません。  もう一つレギュレータがつながっていまして、こちらは 5V 用の AN78L05M ですが、これも 35V まで OK です。
したがって、そのままにしておきます。

パワーパックの中の整流ダイオードにスナバが入っていません。 ダイオードに並列ではなく、トランスのコイルに並列にノイズサプレッサが入っています。
感じられるほどはノイズはありませんので、これも変更しないままとします。

周波数安定性を測定しておきました。 もとから付いている Xtal では 60MHz のローカルオシレータのドリフトはおよそ 20℃ から 40 ℃ の範囲で -0.092ppm/℃ ほどです。 温度は Xtal の周りにあるシールドケースの温度です。 この係数はリニアではなく、40℃ を超えるともっとなだらかになります。  安定になるまでほぼ 80分かかります。
高安定の CR-828 では変動は 1/7 程度になります。  右のグラフは電源投入からの周波数変動を見たものですが、CR-282 は TXCO ではなく、内部に加熱機構を持っていることが伺われます。  最初の 3 分ほど過渡現象が見られます。
もし 2LO の変動と受信周波数の変動との関係を見たいのでしたら、==> このページにお越しください。

究極の安定化もやってみました。 ==>IC-R75、 究極の周波数安定化にその記事を掲載しておきました。


ケースを開けると驚くと思いますが、シャーシの下側はがらんどうです。 高さが 3cm 程度でオプションの DSP 以外何もない空間ですので、いろいろなものが組み込めそうです。
総体的に見てこの機械が気に入りました。 性能を考えたとき、10 万円というのは安い買い物と感じます。


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Links:

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    http://www.plicht.de/ekki/civ/civ-p0a.html
Remote control program, HAM RADIO DELUXE
    http://www.ham-radio-deluxe.com/
Kiwa
    http://www.kiwa.com/R75.html
Radioreference.com
    https://wiki.radioreference.com/index.php/IC-R75
Forums
    http://www.eham.net/reviews/detail/427
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