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Op-Amp その2 - 現実の特性


前回の記事に続いて実際のオペアンプがどの程度の特性を実現しているかについて見てみましょう。
けっこういいところまでいっています。  いろいろなことに使っていて、実際に「困ったな」と感じることが少なくなってきました。  時々もうちょっと何とかしてほしい、と感じることは、低い電源電圧で、Rail-to-rail の特性と、周波数と、負荷電流、といったところでしょうか。


テクノロジ:
使われている基礎的なテクノロジは、バイポーラと、バイポーラと J-FET の両方を使ったものと、 最近出てきた CMOS を使ったものの3種類があります。
バイポーラだけのものが最初のものですが、J-FET を入力部にも使ったものではバイアス電流を数桁下げることのできました。  CMOS を使った最近のものでは電源電圧に近いところまで入出力を振ることができる rail-to-rail を売り文句にしています。

Gain:
もうこれは問題ないでしょう。
ほとんど全部、低い周波数では 80dB 以上です。 100-120dB というのも見るようになってきました。
使用時のフラットアンプやログアンプでの環境を考えても誤差は無視できる範囲でしょう。  これが問題になるような応用はよほど特別な場合だと思いますが、私の場合はありませんでした。 (ただし、周波数が高くなった場合を除きます。)
右下の図は LF357 のゲインが見えるものですが、DC では 106dB あります。

周波数特性:
その、周波数特性についてはもう一息の感があります。
LF357 はかなり高いところまでカバーしますが、それでも FT は 15MHz ほどです。  これで 40dB のアンプを作ると 100kHz 程度までしか動作しません。

右の図では LF155/6 は G=0dB まで -6db/oct で下がりますから移相は 90度遅れのままで、Unity Gain まで安定です。  LF357 ではグラフには現れていませんがもう少し回るため G=5 までの制限があります。

下の図は LM6125 です。  FT は 200MHz あたりまで行っているのですが残念なことにそのあたりまで上がると移相がかなり大きくて発振などの不安定な反応を示すようになります。

このオペアンプはゲインが 25 以上で使うことを条件としています。 20dB で 360 度以上回ってしまっていますね。 Unity Gain では確実に発振してしまいます。
30dB 以上ではそれほど回りませんからゲイン・バンド幅は 700MHz ほど稼げますが、ちょっと手こずるアンプになりそうです。
なお、LM6125 に内部で補正をかけたものに LM6124 や 6121 があって、GB 積を小さくしてあって、もっと低い閉ループゲインで使っても安定です。(オーバシュートはあります)

オペアンプ全体としては過去ずいぶん良くなってきましたので、これからもおいおい改善されていくでしょう。 
最近の回路は高い周波数のものが多くなってきましたから、10-100MHz 程度が楽に増幅できるものがほしいところです。 え?無理ですって?

Slew Rate:
私がよく使う TL072 (TL071から084まで)は SR が 10-13V/us 程度です。 右の図です。
もっとも、私自身はあまり SR に注意を払っていません。 というのはもっぱら小信号のリニアな部分を使うことが多いからなのですが。 もちろん高い周波数で大きくスイングさせる回路では一応テストします。

LF357 もその値程度です。 また時々私も使う低周波ローノイズの NE5534 もその程度です。
高周波用の LM6125 では 200V/us ほどあります。


入力オフセット電圧:
これには2種類あります。 内部でトリム調整をしてあるものと、していないものです。

トリムしていないものではまあ Typical で 3mV 程度というのが相場です。  トリムしてあるものでは 10uV ぐらいまで落としてあるものも見かけるようになってきました。
いくつかとりあげてみますと:
Typ.
(mV)
Max.
(mV)
Comment
NE5534 0.5 4 Bipolar NPN input
TL071C 3 10 J-FET input
LF357 3 10 J-FET input
LM324 3 7 Bipolar PNP input
OPA333 0.002 0.01 CMOS, low offset

私自身はオペアンプ自体が持っているオフセットが気になるような回路はあまり作ってきませんでした。 たいていは外付けの回路でゼロ近くに追い込むことをやってきました。
むしろ、温度によるドリフトの方に気を遣っていました。

入力バイアス電流:
これにも2種類あります。 バイポーラトランジスタを入力に使ったものと、J_FET や MOS を使ったものです。

バイポーラのものでは 100nA から 10nA といったものが相場です。 この値が大きすぎるような回路を作るときは J-FET か MOS を使います。 
J-FET では pA のオーダになりますが、温度による変化率が大きくなりますので気を付けてください。 4.5K 上がる毎に2倍になります。 右の図は J-FET の LF155 の入力バイアス電流ですが、5度から85度の変化で2.5桁大きくなっています。

MOS を使ったものではやはり pA のオーダですが、温度による変化は J-FET ほど大きくなりません。

出力電流あるいは負荷抵抗:
これはしっかり見てください。 中には 10kOhm 程度しかドライブできないものもあります。 同軸ケーブルをつなぐときは 50Ohm になりますから、かなりの負荷になります。 
出力電流の許容値は仕様書ではっきりした記述が無い場合がありますので、グラフからしっかり読みとるようにします。

もう一つ気を付けなければならない点は負荷容量です。 大きな C が出力点につながりますと位相が遅れて発振したり周波数特性にピークが出ます。 負荷に大きな電流が取れるものではこの点で有利になるものがあります。 また、容量負荷耐性を謳っているオペアンプもあります。

出力電流と出力電圧スイング幅には関係があって、電流を取り出すと電圧が制限されます。
下は LF115 の下と上のグラフです。


温度によって変化するのは電流制限がバイポーラのベースエミッタ電圧で制御されているためです。 
電流を取り出すと +-15V の電源から離れていきます。

右の図は OPA333 の特性です。 上下で非対称になっていますので要注意です。 

CMRR PSRR:
どちらも 60-80dB あるのが一般的です。 中には 100dB というものもあります。
これらが問題になる場面はあまり出てこないと思います。

あ、非常に低歪みのアンプを作る場合は CMRR が大きいものを選びます。 120dB とか。
理由は、NFB を掛けたときに2つの入力の差分が増幅されるわけですから、正確に差を取ってもらわなければならないからです。 最近出たナショナルセミコンダクタの LM4562 は非常によい特性をしています。  Link

電源電圧利用率:
電源電圧をどれだけ利用できるかということは、とくに低電圧で使用する機器では重要な要素になってきます。

まず、バイポーラのオペアンプでは、出力電圧は上も下も 1.5-2.5V 程度離れて使うのが一般的です。 それ以上は近づけません。 また、負荷電流をとるとそれがさらに大きくなります。
例外的にバイポーラでも rail-to-rail の出力と表示しているものもあります。
rail-to-rail という言葉ですが、必ずしも上の電源電圧から下の電源電圧までのことを言うわけではありません。 通常は、100-200mV まで近づければそういうようです。

rail-to-rail の出力を得るには回路上で工夫がいります。 

下図は、バイポーラで上側から PNP で引き、下側から NPN で引いたやり方です。  Linear Technology の LT6200  という非常に低雑音で、比較的高速で、低電圧でも使えるという優れものです。(ちょっとバイアス電流に難ありですが)   NPN と PNP を対称的に使ってユニークな特性を出しています。 右の写真は LT6200-5 です。



また下のように、上は PMOS で引いて、下は NPN にするとか(LMV358)、上を PMOS で 下を NMOS を使う CMOS リニア(OPA345)も一般的になってきました。




入力側については、同じように 1.5-2.5V 程度の余裕を与えるものが一般的ですが、PNP をダーリントンにして下側の電源まで振れるようにした LM324 がありますし、NPN をダーリントンにして上側の電源まで振れるようにしたものがあります。
また、最近の CMOS リニアでは両側のレイルまで振ることのできるものが多くなってきました。
喜ばしい限りです。

ただし、CMOS のものでは、ノイズレベルと帯域に気を付けてください。 バイポーラに劣ることがあります。

[関連記事]
Op-Amp その1 - 理想特性
Op-Amp その3 - 内部回路例


[参考]
Texas Instruments OpAmp list
National Semiconductor OpAmp list
Analog Devices OpAmp list
Linear Technology OpAmp List
Intersil OPAmp catalog
Op Amp Application Handbook、Analog Devices, Inc. By Walt Jung