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スミスチャートで整合の方針を立てる


注意: 新しいページ==>「スミス・チャート ツール」もご覧ください。
         また、具体例も==>「スミス・チャートの使用例」に書いておきました。


スミスチャートというと毛嫌いをする方が多いのですが、一旦理解するとこんな便利なものはないので、とっつきのところを解説します。
このページに書いてあることが分かったらあとは自由に応用ができるようになるはずです。

スミスチャート (Smith Chart) というのは2端子網を外から見込んだときに、見えているインピーダンスの複素数を特殊な円の中にプロットできるようにしたものです。

複素数は本来は無限大の平面上に採られます(ガウス平面)。 この平面を、まず右半分だけしか考えないことにします。  レジスタンス(抵抗)分は受動素子では負になることがないという前提です。
次に、この右半分の平面で、上方の無限大を手でつかんで、ぎゅっとねじまげ、実数の1の点に押し込みます。
平面の下の方の無限大もつかんで、ぎゅっと下の方から持ってきて実数の1の点に押し込みます。
平面の右はるか彼方の無限大も、上の動作で半ば自動的に実数の1の点に押し込まれます。
そうすると、半無限平面は直径1の円の中で表現できるようになります。
これが Smith Chart の円です。 半無限平面上の各点はこの円の中の点と1対1で対応(写像)していますので、インピーダンスを表すことができます。  もちろんその逆数のアドミタンスも。
(無茶な表現をしましたが、数学的表現は下記の注をご覧ください。)

インピーダンスが周波数によって動くときは、 Smith Chart 上で、軌跡として現れます。


基本の図です。 原点(左端の 0 の点)から上に伸びる虚数軸が右に大きく曲げられて円弧になっていますね。 
マイナス側も同じです。

2端子の素子を負荷としてインピーダンスを測定したら、この円の中のどこかに点として表現できます。

中央は、測定の際の基準となるインピーダンスの実数値で、まあ普通は 50Ω に採られます。 この中央に取った値のことを「正規化インピーダンス」と言います。
右の端は開放で、無限大のインピーダンスを表します。
円の下半分はキャパシティブで、上半分はインダクティブの領域です。

等抵抗円は、実数部分が同じであるインピーダンスを持つ点の集合です。 等リアクタンス円はその反対ですね。

では、例として Z=50+j50 の点を取ってみます。 ピンクの位置です。

この点を通る等抵抗円と等リアクタンス円を描きます。 青破線が等抵抗円で、赤破線が等リアクタンス円です。

Z の負荷に直列に抵抗を入れると、リアクタンスは変化しませんから等リアクタンス円にそってインピーダンスが動きます。  インピーダンスは大きくなる方向ですから赤い矢印の向きです。
もちろん実際に整合を取るときは抵抗は使いません。 (損失になりますから)

Z の負荷に直列に C を入れますと等抵抗円に沿ってインピーダンスが動きます。 緑の向き(キャパシティブの方向)で、C が小さいほど大きく動きます。
直列に L を入れますと青い矢印の向きに動きます。 L が大きいほど大きく動きます。
C の時も L の時も動く量は周波数によって異なります。 当然ですね。

上の例では、直列に C を入れ、そのリアクタンス分が 50Ωになると、ちょうど中央の点に移動して 50Ωの伝送線と整合が取れるようになります。


同軸ケーブルやストリップラインのような時間遅延をもつエレメントを挿入すると左の茶色の一点鎖線に沿って時計回りの移動をします。
茶色の一点鎖線は「等SWR円」と呼びます。

この回転量 2*θ は遅延線を往復する時間にあたります。

     θ = 360 * (長さ)/(実効1波長) [度]

です。 実効1波長というのは、伝送線が誘電体に包まれているときは 1/√(εr) で短縮した波長です。 テフロンですと真空中に対して 70% 位です。 遅延線の特性インピーダンスが正規化インピーダンス(Z0)と異なるときは、回転の中心が別のところになります。  この==>ページで実験してみてください。

左の図はスミスチャートにサセプタンスとコンダクタンスが見える円を記入したもので、アドミタンスチャートといいます。
並列に素子を付加するときはアドミタンスの平面で考えます。
あるロードのインピーダンスがスミスチャートの下の方にあったとします。 ピンクの点です。 この点は、アドミタンスで数値を読むことも出来ます。
(なお、アドミタンスとインピーダンスの関係は、円の中心を挟んで点対称の位置です。)

この点Yを通る赤い破線を 「等サセプタンス円」 と呼び、青い破線を 「等コンダクタンス円」 と呼びます。 
ピンクの点に相当するアドミタンス素子に並列に抵抗(の逆数)をつなぎますと、赤い矢印の方向にアドミタンスが動きます。 抵抗値が低いほど大きく動きます。
もちろん実際に整合を取るときは抵抗は使いません。 損失になりますから。

並列に C をつなぎますと緑の矢印の方向に動きます。 キャパシタンスが大きいほど大きく動きます。
並列に L をつなぎますと青い矢印の方向に動きます。 インダクタンスが小さいほど大きく動きます。


さてこれで料理の材料がそろいました。 
インピーダンスの分かっている負荷を、直列や並列の C や L を使って、特定の伝送線に整合させようというわけです。 もちろん周波数を決めておかねばなりませんが。


左のスミスチャートはインピーダンスとアドミタンスの両方の円を使いますので、イミタンスチャートと呼びます。

いま、扱う周波数が 1GHz だとします。
負荷は仮に 16+j30 Ωの素子だとします。 (受信機のアンテナ入力端子でもいいです)
これを 50Ωの同軸に整合させます。

方法はいくつかありますが、そのひとつを紹介します。
赤い点 16+j30 Ωを取ります。
ここを通る等抵抗円(緑の破線)を描きます。
また、50+j0 を通る等コンダクタンス円も描きます。
16-j23.4Ωの点がその両方の交差点であることに目を付けます。
赤い点から直列に 2.98pF を入れると 16-j23.4 の点に移動します。
ここから、並列に 5.5nH を入れますと、50+j0.4 に移動して整合が取れます。

他にも多くの方法があります。 例えば、赤の点から等コンダクタンス円に沿って右回転し 50+j33 のあたりで等レジスタンス円に乗り換えて左回りで 50+j0 に行き着くというやり方もあります。 キャパシタ2つですから上の方法より安くなるでしょう。
また、赤い点から等抵抗円で左に少しだけ行って 16+j23 のあたりで等コンダクタンス円に乗り換え、右回りで中央に到達することもできます。
もちろん遅延線を使う方法もあります。 たぶん以上4つのうち、3番目が良いような気がします(未検証)。

このように、一目でいくつもの整合方法の戦略を立てることができるのです。
どの方法も、直列の C や L や遅延線、並列の C や L を数珠繋ぎにして、中央の点に行き着く、ということです。 まちがっても抵抗は使わないでくださいね。
また、周波数をスイープしてみて、帯域がどう変化するかにも注意してください。
すぐ気が付くことですが、途中で中心から離れた点(SWRが高い)を経由した場合は、スイープすると軌跡が変動する量が大きくなることです。 (Smith-Tool.htm で確認できます)   ですから、できるだけ中心から離れないように素子をかませていきます。

スタブについては触れませんでしたが、面白い動きをします。 先端が解放してあるスタブだと、λ/4 までは C と同じような働きをします。  それを超え、λ/2 までは長さが長くなるほどCを小さくするような動きをします。  それを超えると、1λまで L のような動きをします。
先端がショートの場合はλ/4まで L と同じように動き、それを超えると C に化けます。 3λ/4 から再び L になります。


この図はある私の自作の素子をネットワークアナライザにかけ、スミスチャート上にインピーダンス表示したものです。 周波数を 30% 位振ったときにどう動くかを見ています。

リアクタンス分もレジスタンス分も中心周波数ではねらったところにあるのですが、周波数がかわると動き回っていますのでやっかいな素子になっています。




スミスチャートを描くときに便利な Tool を別のページ(==> 「スミス・チャート ツール」)で用意しましたのでお使いください。
また、その使用例の記事も書きましたので参照してください。 これ==>「スミス・チャートの使用例」です。
ほかにもいくつか Web で公開されています。 上の Links のアイコンをクリックして、出てくるページの右下の方にまとめてあります。 
この ==> ファイル もとてもいい教材です。

慣れてきたら、スタブを入れるような高級な技も練習してください。

現物を見たいかたはどうぞ ==> ダウンロード
イミタンスチャートの PDF はこちら ==> ダウンロード
     (IE: 右クリックして「対象をファイルに保存」を選ぶ)
     (FireFox: 左クリックし、保存する)
あるいは Amazon で購入: Smith Chart: Full Color Paperback

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注: 半無限平面(Z)の円面(G)への変換

半無限平面上でのインピーダンス(Z)を正規化したもの(例えば 50 で割ったもの)を zt(複素数)とし、また円面の中に存在する、zt に対応する点を (P,Q) とします。 G 面は真ん中を 0 として 半径 1 の円とします(上の説明と違っていてすみません)。  P は G 面での X 方向の位置で、-1 から +1 までの値です。  Q も同様に G 面の Y 方向の位置で -1 から +1 までの値を取ります。 プロットは円の外側には出ません。
複素数 P+jQ をガンマ(Γ)と表現することもあります。
そうして、
 Γ = (zt - 1)/ (zt + 1)
で (P,Q) の位置を表すことができます。
ついでですが、この Γ のことを反射係数(Reflection Coefficient)と言い、その振幅部分(|Γ|)を記号 ρ で表すこともあります。
|Γ|=0 で反射がなく(SWR=1)、|Γ|=1 で全反射(SWR=∞)になります。
SWR = (1+|Γ|) / (1-|Γ|)   です。