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オペアンプで整流回路



低周波の信号を取り扱うとき、その電圧量がほしくなることがあります。 電圧の絶対値を出す回路です。

絶対値を取ろうとすると、両波整流をすることになりますが、一般にダイオードは順方向電圧降下がありますから、ダイオードだけでは低い電圧で誤差が出てしまいます。
私が、最初にこの問題を解決した回路に出会ったのは昭和43年頃でした。  負帰還回路にダイオードを入れて、うまくさばいているのを見て感心したのを憶えています。

思い出して描いてみると多分右のような回路です。 測定器の回路でした。  ダイオードの不感帯では増幅度が大きくなって乗り越えてくれます。
真空管ではカップリングキャパシタが必要になりますから、この回路自体は低域の振動に対してかなり注意した設計が必要になります。  また、メータがグラウンドから浮いていますから、その大きな浮遊容量のために位相回りが発生します。  でも全体としてはうまく作られていました。


回路例1-1

右の回路はそれをそっくりまねて、ブリッジ整流を簡単な両波整流に置き換えただけのものです。
部品数がずいぶん少なくなって、また振動の心配もなくなって、これがオペアンプのいいところですね。

これはメータを振るだけですので、電圧を取り出すためにはメータの両端にあたる2つのノードから差動増幅してやります。 

すると右のようなやや複雑な回路になります。 この回路はうまく働きます。
R1 は OP1 のバイアス電流によるオフセットの調整用ですから FET 入力なら省略します。
広帯域にするため 470 Ωを入れていますから、OP1 の負荷が重くなっています。 ドライブできるものを使ってください。
OP2 の周波数特性によっては、R3 と R4 に並列に数 pF をいれて高周波の位相補正をしてやると高い周波数での平坦性が良くなります。
ここで使った差動回路は弱点があって、上側(負側)と下側(正側)では信号源インピーダンスの影響が異なります。  そのために正負の振幅が異なっていたら R4 を少し加減して合わせてください。 具体的には 5.13kΩ ほどになるでしょう。 これについては別の記事を参照してください。

私は両波整流が必要なときはたいていこの回路を使っています。

回路例1-2

広帯域の特性が不要のときは右のように抵抗を省略した回路が使えます。

回路例1-3

高い入力インピーダンスが必要な時はこの回路が使えます。 しかし注意が要ります。  入力が負に振ったときに、発振する可能性があります。  Cc は位相補正のためで、1つ目のオペアンプの高域を落として発振を押さえています。  目安として Cc*R1 積を、2つ目のオペアンプのユニティーゲイン BW の 1/4 程度にします。


回路例2

右の回路はよく見かける両波整流回路です。
動作はうまく考えられています。 まず入力が負に振ったとしますと、B 点がマイナスになろうとします。  OP2 が動作して、D 点がプラスになり、ダイオードを通していくらでも電流が供給されます。  ですから B はマイナスになることができず、ゼロボルトで固定されます。  OP1 によって A がゼロになるような出力がプラスの量として C に現れます。 ちょうど入力の反対の極性で同じ量になります。

入力が正になったときは、B がプラスになろうとします。  OP2 は D を精一杯マイナスに振りますが、ダイオードは逆を向いていますのでマイナス側で飽和して止まります。  B は入力電圧になります。
OP1 が働いて、A が B と同じになるような C を出します。 すなわち入力と同じ値です。 
うまいですね。

ところが、この回路には2つの問題点があります。 あまり解説されていないですけれど。

問題1:
D が負側に飽和した後、B が下降してきて飽和から抜け出ようとする瞬間ですが、オペアンプは一般的に飽和からの回復に時間がかかるのです。  過剰のキャリアがベースに注入され、それが再結合で消えるのに時間がかかるためです。  (もちろん素早く立ち直るものもあります。)
また、飽和から抜けた後、いっぱいに負に振れた状態からゼロボルトまで上がってくるのに、Slew Rate 以上のスピードでは上昇できません。
さらに、ダイオードが順方向に切り替わる瞬間は、順方向リカバリの時間が必要です。
この3つの理由のため、マイナス側の出だしが遅れる傾向にあり、高周波特性が悪くなります。

問題2:
B が正側に振って 0.6V より大きくなったときですが、OP2 の入力に保護回路が入っていると電流が漏れてしまいます。  右図の通りです。
このため大きな誤差が出ることがあります。

この2つの問題に気をつけて使ってください。


回路例3

右の回路は上の1つ目の問題を解決したものです。

よく考えられていますね。 でも2つ目の問題は積み残されていますから気がかりです。   (10/5 修正)



[10/5 修正]
読者の方からご指摘があり修正します。
私の思いこみでした。 OP2 の入力は正側に大きく振れることはなく、2つ目の問題も解決されています。

もうひとつのご指摘がありました。 それは、正側と負側の信号経路が異なるため、 OP1 の入力位置で時間差が出てしまうことです。  この問題を解決するには、短い方の経路に遅延を入れて補正してやることです。 下の図を見てください。  正確には左のように2つの補正を入れるべきでしょうが、右側の図で十分でしょう。  2つの浮遊容量の内 Cs1の方が優勢ですから、 Cc でそれをねらいうちします。