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キャパシタを並列接続すると (またはコイルを直列接続すると)


前回の記事「GHz 帯でのセラミックキャパシタ」で、小さいキャパシタと大きいキャパシタはそのまま並列接続してはいけないと述べました。
それを見てみましょう。

同じようなことがコイルについても言えますのでそっちも考察します。


[キャパシタ]

右の図は前回取り上げた Murata の GRM21 タイプの 0.1uF と 10pF をそのまま並列にして、等価回路からインピーダンスを計算したものです。

もうお分かりですね。 小さい方のキャパシタンスと、大きい方の浮遊インダクタンスとが並列共振して大きなインピーダンスになります。

このように、何桁も異なる C をそのままつないぐときは、よほどの注意が要ります。 こういうときは、小さい方のキャパシタに少し損失分をかませて、Q を落としてやると、ある程度ピークを緩和することができます。
あまり期待はできないですが、どの程度良くなるか見てみましょう。

下の図は Q ダンプをして 0.1u と 300p と 1p を 3 つ並列にしたものです。


この特性は右の図のようになります。
赤い細い線が入っていますが、300p を取り外して 2 パラにしたときのグラフです。
3パラの時は上限が 20 Ωで頭打ちになっています。 その分ディップの底が持ち上がって犠牲になっています。
なんとか 2GHz 程度まで使えそうです。

こうして、すこしずつ損失を入れながら多くの素子を並列接続するという考えを推し進めるとどうなるでしょうか。  積層キャパシタの中で、小さい容量から大きい容量までの構造を対数的に作成してやって、広帯域で使えるキャパシタができあがるかも知れません。
だれかやりませんか?
あ、ここでもう公開しましたから特許は取れませんよ。

[コイル]

何桁もインダクタンスが異なるコイルを直列につなぐときも同じ問題が発生します。
広帯域の信号を取り扱う回路で、直流分を切って次の段につなぎ、そこでバイアスの電流が必要なときは 「BIAS-T」 とよばれる回路を入れます。(右図)
何の変哲もない C と L の回路ですが、わざわざこうして名前まで付いているのは、この回路が非常に低い周波数から非常に高い周波数までを無事通過させる義務を負っており、 それが難しいからです。
回路中の C については前回の記事で書きました。
L についても同様に、広帯域に亘って、50Ω より十分高いインダクタンスが必要です。

このため、ややもすると2つのコイルを直列につなごうとする気持ちになります。 でも、上のことを思い出してください。 気を付けて。

TDK の MLF1608 1uH は共振点が 120MHz ですから、並列に 1.8pF が見えます。 コイルは 0.5Ω の巻線抵抗があります。  このインダクタは、Q が周波数で大きく変化し、共振点付近では低くなって、並列に 1kΩ の抵抗が入ったように見えます。

さて、1uH では低い周波数でリアクタンスが足らないので NL2016 シリーズの 22uH を直列に入れたいとしましょう。  こっちの方は浮遊容量が 3pF あり、巻線抵抗は 8Ωです。

もしも、1uH の方にコアロスがないとすると大変なことになります。


左の図の青いトレースがそれで、1uH と 3pF が直列共振して鋭いディップが発生し、ここでコイルの役目が放棄されてしまいます。

偶然の幸いで、今回は 1uH の方にコアロスがありましたから、実際はこれほど下がりません。

ついでに、22uH の方にも Q ダンプの 1.2kΩ を入れてみますと赤いラインのようになってディップは穏やかになります。
(ただし、20MHz にあったピークは下がってしまい犠牲になります。)



[余談]
右の絵の Mini-Circuits 社の Bias-T の商品は、コイルにかなり工夫が凝らしてあるようですね。  3種類の線がさまざまに巻かれてあるのが見えます。

20MHz から 2.5GHz までをカバーしてるもので S21 が -0.35dB です。 インダクタンスは全部で10uH はあるでしょう。  かつ、一番上の共振は 1GHz 近くまで持ち上げてある必要がありますから努力のたまものです。   (修正しました、、100k-6GHz のものはこの絵の大きく描いてあるものとは違いました。 小さく茶色の箱が見えますが、それです。)





[9月28日追加記事]

上記の記事はメーカのカタログから読み取ったパラメータを使用して計算しています。
ところが、このカタログデータをそのまま鵜呑みにしてはいけないことが分かりました。  「GHz 帯でのセラミックキャパシタ」 の追加記事をご覧ください。

実際には、上記のキャパシタの並列に関する記述では、派生的に発生する並列共振点はずっと上の方に行き、問題は軽減されます。
どの程度軽減されるかは、配線の状態とその部品の持っている特性で決まりますので一概には言えません。  いつか機会があればいろいろ測定してみたいものです。

実際の経験としては、ケミコンにセラミックを並列につないだときにこれが起きました。  最近のケミコンでは浮遊のインダクタンスが少なくなるように工夫されていますから、これも軽減されています。



[9/19/2006 追記]

読者の方からの情報です。
上の Mini-Circuits の Bias-T の構造について Forum に報告をお寄せ頂いています。
また、Picosecond 社 のサイト http://www.picosecond.com/product/product.asp?prod_id=8 で、上限が 15GHz の Bias-T の紹介がされているとのことです。  低い周波数の仕様は 7kHz ですが、特殊な条件下です。 さらに、 http://www.picosecond.com/objects/5542%20SPEC-4040037.pdf も参考に。