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Mixed Feedback

一つ前の記事で Mixed Feedback について言及しましたので、ここで簡単に解説しておきます。 Mixed Feedback は負帰還と正帰還を組み合わせてトランスデューサーをドライブし、 その巻線抵抗をキャンセルさせることによってどの周波数でも常にインダクタンス部分に入力信号と比例した電圧を与えようとする工夫です。 
トランスのドライブに使った場合はコイルの抵抗分がなくなりますから出力インピーダンスを下げることができますし、低い周波数での歪を極端に減らすことができます。 特許(期限切れ)はこれです:

DE2901567

Title:
Volt drop compensation for output transducer - uses positive feedback from primary winding to input amplifier and negative feedback to inverting input of operational amplifier

Abstract:
The primary winding of the transducer is excited by an operational amplifier and the object of the proposed circuit modification is to keep the primary winding voltage exactly proportional to the amplifier input voltage. Non-linearities occur due to primary winding ohmic resistance and distortion introduced by the presence of a magnetic core. A positive feedback resistor is added between the primary winding and the reference voltage, and a connection taken to the non-inverting input of the amplifier. The values of the inputresistor, negative feedback resistor, and positive feedback resistor are chosen such that for k = Rn/Re = k'* Rc/Rx the value of k' lies between 1 and 1.1. In this range almost complete compensation for resistance volt drop and harmonic distortion is achieved.

Rc は図の Rcu のことで、トランスデューサーの巻線抵抗です。 Rx は図中の R' です。
考え方としては、内部の巻線抵抗分だけから電圧を取り出すことは不可能なので、外部に同等の抵抗を置き、その両端の電圧の2倍だけを余分にトランスに与えてやれば巻線抵抗と検出抵抗のドロップ分がなくなるから、 インダクタンス部分だけに電圧を与えることができる、ということです。
図に示されている C は、低い周波数で正帰還が負帰還より大きくなった時にオペアンプがラッチアップしてしまうのを防ぐためです。  このカットオフ周波数は、目的とする通過帯域の下限より 1/100 とか 1/200 にしますので、事実上はここに C を入れて目的を達成することは困難です。

それを改善したものが下の左の回路です。 これは Analog Devices の "Op Amp Application Handbook" by Walt Jung の 487 ページにある使用例です。  C2*R5 積を 1.8 秒にしていますね。 6.65k というのは反転入力側にある 10k と 20k の並列の値で、バイアス電流によるオフセットを低くするようにしたものです。
R4 は LL1582 の一次側の巻線抵抗を半分にした値にします。 半分というのはオペアンプ部の増幅率(20k/10k)の逆数です。 20Hz で歪を測りながら Pot を調整すると、トランスによる歪はほぼ無くなります。
右側は、おなじく Analog Devices の回路で、トランスを上下から駆動した例です。

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この右の図は私のアイデアです。
上記の方法はどれもオペアンプの反転入力を使っているため、低い入力インピーダンスになり、また、信号源インピーダンスが低い(<10Ω)ことを要求しています。  それを改善する試みです。
図中の Rth はサーミスタを使ってコイルの銅が持っている抵抗の温度係数を補正しようとしています。 カーボン抵抗よりはるかに大きいので補正が必要です。
R1*C1 の時定数は下限の周波数 20Hz(8ms)の 250倍程度(2秒)に設定します。 r2 は r1(巻線抵抗)と同じ値にします。  RT は 20Hz で歪が最低になるよりわずかに大きい値にします。 C1 が無限大なら R1 はほぼ R になりますが、有限ですのでそれより少し大きくなります。  R1>>r2 にしたいところですが、実際には r2 を無視できないので Pot で調整します。  C2 は高域で正帰還による補償がいらなくなるので高域を減衰させ、かつ OP2 の高域の不安定性を解消させるものです。

注意することとしては、低い周波数でコイルのリアクタンス分が小さくなりますから、オペアンプから大量の電流が供給されるようになります。  このため電力の大きなオペアンプにヒートシンクを付けることになるでしょう。 また、補正した分だけ高い出力電圧が必要になります。  上に掲げたどの回路でも同じです。

Pot はこのように接続する方がいいと思います。 Analog Devices のアプリケーションのように使うのは感心しません。  理由は、Pot のスライダーが接触不良を起こした時にオペアンプの入力がオープンになり大きな音が出てしまうからです。

LL1587 では改善する必要もなさそうなので ST71 で右のような回路を想定して、トランスのインダクタンスにかかる電圧を計算してみました。
|ETrans/Ein| の伝達関数です。 巻線抵抗分を引いています。 R=22kΩ C1=100uF r1=r2=51Ω とし、R1 を探すと 25.3kΩ で最適になります。  予想通り、オペアンプの出力電圧はピークで中域の 10 倍弱が必要になります。 電流もその程度要ります。 すごいですね。  前段で 10Hz 以下は切っておかねばなりません。
赤の細い線は r2=0 として正帰還(PFB)を無くした場合の参照線です。


R1 が変化するとどのようになるか調べておきました。 クリティカルです。

アルミ電解キャパシタは液体を使っていますので、それが漏れると容量が小さくなります。  半分になることもざらにありますので長期信頼性に気を付けなければなりません。 左の図は C1 の容量が 1/4 になったケースです。
ですから、アルミ電解を使うのではなく OS-Con (Aluminum-Polymer Capacitor) をお使いください。

(思い出すと、以前は容量抜けを見越して2倍ほどの初期容量を持たせたアルミ電解が一般的でした。 最近はそういったものは見かけなくなりましたね。)




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(2/26/2018)武        

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作者: 藤原 武 Tak Fujiwara