インピーダンス変換器 - その2
ひとつ前の記事でインピーダンス変換する各種の回路をあげておきました。 今回はそれを変形してグラフィックイコライザに応用した例を2つお見せします。
一つ目は世の中に広く使われている回路で、2つ目はあまり見かけない回路です。
原理は、C をインピーダンス変換回路で L に化けさせ、その L に別の C を直列に入れて共振点のインピーダンスが低くなることを利用します。 低くなったインピーダンスで分圧すれば特定の周波数帯が減衰しますし、 NF のブランチに入れればその周波数を増幅することができます。
第1例
この回路例は National Semiconductor のアプリケーションを拝借したものです。(National Semiconductor Audio/Radio Handbook, by Matin Giles, ISBN 1882580354)
F1、F2、、、、それぞれが別の周波数帯を受け持ちます。 まあ可聴周波数帯を5つぐらいから7つぐらいに分けます。
図の中に赤字で示した Z1 は、定数の取り方のよってインダクティブにすることができます。 おおざっぱに言うと、C1 をかなり小さくし、R1 を R2 に比べてずっと大きくします。
Z1 がインダクティブになれば、直列に C を入れることによって抵抗を持った直列共振回路を形成させることができます。 それが C2 の役目です。
ちょっと Z1 を計算してみました。 若干複雑な式ですが分母を有理化して実数部と虚数部に分けるとこうなります。
Z1 実数部分
R2 + R1* (ω*R2*C1)^2
= ------------------------
1 + (ω*R2*C1)^2
Z1 虚数部分
ω*C1*(R1*R2 - R2^2)
= ------------------------
1 + (ω*R2*C1)^2
R2 + R1* (ω*R2*C1)^2
= ------------------------
1 + (ω*R2*C1)^2
Z1 虚数部分
ω*C1*(R1*R2 - R2^2)
= ------------------------
1 + (ω*R2*C1)^2
まず虚数部分を吟味します。
分母の C1 を E-9 程度に取ると、2乗されますからずいぶん小さくなり、R2 を 1k より小さくしておけば左側の 1 が優勢になって2項目が無視できるようになるでしょう。 ただし、周波数がずっと高くなりますと誤差が入ってきます。
分子側に目をやると、R1 を R2 に比べて大きくすると R1*R2 が優勢になって全体の符号は正になります。
つまりインダクティブというわけです。実数部分を吟味しますと、
分母は上と同じです。 分子は、全体に常に正ですが、第2項は第1項の R2 よりは小さくなりそうです。
よって、、、、カット/ブーストの量は主として R2 と分圧抵抗で決まり、L と Q は R1*R2*C1 で決まる。 C2 はその L に合わせて決める。 R1 は R2 よりずっと大きくしておく。 C1 はかなり小さい値を使う。 、、、 ということができます。
右の表はナショセミが推薦している値です。
この中の 1kHz の値を使って周波数特性を計算してみました。右の図に計算時のモデルを描いてみました。 カットの時は最初の図のオペアンプの + 入力に Z2 が入ります。 直列共振したところでインピーダンスが低くなり、3k と分圧されて出力が低くなります。
ブースト時はオペアンプの - 入力が低いインピーダンスでグラウンドされますので増幅率が上がります。
その様子は下のグラフの通りです。

だいたい素直な特性が出ています。 高い周波数で 0.4dB ほどの誤差が入っていることが分かります。
第2例
上の回路とよく似ていますが、また違った式になる例が右の回路です。この Z2 の部分を、上の回路に置きかえます。
この回路は前回の記事の中で、2つ目に書いたやつです。
Z1 の実数部分は (R1 + R2) となり、インダクタンスは (C1 * R1 * R2) となります。 こうすると、実数部分に周波数の成分が入ってこないので設計がしやすくなり、高い周波数での誤差が入り込まなくなります。 また上の回路よりはるかに単純な式ですので設計が楽です。
インピーダンス変換された L に対して外部に C2 を付けて直列共振させます。
定数の決定はまずカット/ブーストの量から入ります。 例えば 10kohm の抵抗とで分圧するとして、12.7dB 落としますと、R1+R2 を 3kohm とするわけです。 R1 と R2 は L を稼ぐために同じ値としますので、それぞれ 1.5k になります。 続いて Q の仕様値から、(R1+R2)*Q としてあるべきリアクタンスを求めてそれから L を出し、L=C1*R1*R2 を使って C1 を 出します。 最後に ω=1/SQRT(LC) の公式を使って C2 を出します。
1kHz と Q=1.7 なら L のリアクタンスは 5.1kΩ、L は 0.812H、C1 は 0.36uF、C2 は 0.0312uF になります。
若干の欠点は、求まる C1 がかなり大きくなって、キャパシタの図体が大きくなることです。 これを逃げるためにインピーダンスレベルを高くすることはできるのですが、雑音の点でやや不利になります。 例に出した回路定数では、カットを 12.7dB に押さえて L を大きくする努力をし、さらに 10k で分圧してインピーダンスをあげています。 第1例の回路の 3k からは3倍の開きがあります。 インピーダンスレベルを上げた分だけ、ポテンシオメータの抵抗値も上げておく必要があります。
下のグラフは Q=1 と 1.7 で計算したものです。 第1例の場合と違って高い周波数での誤差が入っていません。
どういうわけか、この方式を使ったグラフィックイコライザを見かけませんね。

