MastHead

2SK30A で AGC


昨日掲載した State Variable 発振器に使った 2SK30A ですが、 これを AGC (Automatic Gain Control) に利用するときの注意点を解説しておきます。

FET は3端子素子ですので制御側と被制御側の分離ができません。 ですから、その素性をちゃんと理解しておかないとうまく利用できないことになります。
昨日の使用例では、歪みを持ち込まないための工夫が大事です。

ジャンクション型の FET はゲートをチャンネルに対してほぼ +0.3V より低い電圧にして使用します。  +0.5V より高くすると gm は大きくなるのですが、PN 接合が順方向となってゲート電流がじゃじゃ漏れになりますから、意味が無くなります。


VGS = 0V

まず VGS = 0V の特性を頭に入れてください。 右の図です。
横軸はソースに対するドレイン電圧で 0.2V/div 、縦軸はドレイン電流で 1mA/div です。 中央が 0V、 0mA です。
V>DS=0V 付近ではほぼ 360 Ω 程度の抵抗を示しています(このサンプルの場合)。  まんなか付近では少し弓なりになっています。  ドレインが -0.5V より低くなるとゲートからドレイン近くのチャンネルにジャンクション電流が入ってきて、それが 100Ωを上に抜けるので大きく曲がります。


ドレインとソースはほぼ同格

ジャンクション型の FET のほとんどは、内部の構造はソースとドレインがほぼ対称になっています。 ですからそれらを入れ替えても同じ特性を示します。
試しに入れ替えてみた様子が右の図です。 全く同じカーブになります。 
ドレインが負になったときは、ドレイン端子はソースとして動いているのです。  ゲート電圧をソースを基準として計ると、負の時だけ信号で振られることになります。


VGS = -1.3V

ゲートを負に振ってやるとドレインからのぞき込んだ抵抗値は上がります。 -1.3V で 800 Ωほどになっています。 もっと下げるとどんどん大きくなります(カーブが寝てきます)。 

さて、ここまでの図で非常に大事なことは、どれも上に凸のカーブになっていることです。  チャンネルの、ドレインに近い部分の電位はドレイン電圧の影響がありますから、チャンネルがドレイン電圧によって深くなったり浅くなったりすることが原因です。
これを AGC に使うと、2次歪みを持ち込みます。
これが、3端子素子の弱みです。


フィードバックの効果

それでは、ドレインからゲートに並列に 47kΩ で NFB をかけてみます。

制御電圧は 47kΩ を通してゲートにつなぎます。
ゲート電圧は、制御電圧とドレイン電圧の中間になりますから、チャンネルとゲート間の電圧はドレイン電圧の影響を受けにくくなります。
逆に制御電圧も影響が小さくなってしまいます。

その様子を、制御電圧 (Vcontrol) を +1.3V、0V、-1.3V、-2.6V に変えながらグラフにしてみました。
+1.3V のときは少し曲がっていますが、0 以下ではずいぶん直線性が良くなっています。

抵抗値を読みとってみますと、VDS が小さい部分では

   @ +1.3V  310Ω
   @     0V  364Ω
   @ -1.3V  462Ω
   @ -2.6V  706Ω

となっています。 何とか使えそうだということで前回の回路になったわけです。 

(なぜ 1.3V なのかって? NiCd 電池を使ったのです。)


J-FET の構造と、NFB の効果の考察

上のグラフはどうしてそのようになるか考えてみます。

J-FET の構造は左のようになっています。 P 型のサブストレートに、エピタキシャルプレーナの様な技術で N 層を作り、深さを管理しながら、中央部に P を打ち込みます。 N の左右にオーミック接続でソースとドレインの電極を作り、まんなかの P とサブストレートはゲートととして使います。 P 領域を負にしていきますと、 PN 接合の位置に空乏層ができ、N のチャンネルが狭まってドレイン-ソース間の電流が流れにくくなります。

それでは、このまま、ゲートとソースの間に電圧をかけてみます。 ゲートが -2V です。
左の図です。 チャンネルの電位がゲートに対していくら高いかを想像します。 チャンネルの、ソースに近いところ、中央付近、ドレインに近いところ、それぞれを考えます。 ドレインを +1V のときと、 -1V の時の両方を見てみますと、その2つのケースでは左右が非対称であることが分かります。 ドレインが -1V になったときの方がゲートからの電位は低く、より電流が流れやすくなっています。 なので、カーブは下の方へ曲がっていきます。

それでは 47k を2つ使って、右の図の様につなぎます。 同様に、ドレインを +1V と -1V にしたときを比べてみますと、、、、このように、左右が対称になることが分かります。
ですから、素子が対称に作ってあるなら、カーブは第1象限と第3象限が点対称となります。

一見うまくいったように見えますね。


残された問題点とその軽減策

いくつか問題が残っています。
問題1. 点対称と言っても、それは直線であることを保証しているわけではありません。
問題2. 素子が完全に対称的に作られている保証がありません。
問題3. ドレインに電圧源(インピーダンス=0)を仮定して考察しましたが、実際は
      インピーダンスが数百Ωあります。 これにより、制御電圧 (-2V) の影響が
      ドレインに現れ、オフセットになります。

1番に対しては、せいぜい小さい電圧範囲で使う様にします。 0.1V とかいった値です。 前回の記事では 20 - 30mV 程度で使っています。

2番に対しては、右の様なアイデアはいかがでしょうか?
2つをひっくり返して並列につなぐのです。 もちろん IDSS はそろえておきます。

3番に対しては、解決ではありませんが、ゲートにつながっている2つの抵抗を高くします。 前回記事では 47k を使っていましたが、これを高くするのです。 47k ですと、ドレインが 500Ω として、2V の 500/94k である 10mV が summing amp にオフセットとして入ってしまいます。 オフセットが問題になるなら 470k の方がいいでしょう。 右の図です。 オフセットは 1/10 になります。

抵抗の出すノイズが3倍ほどになりますが、ドレイン側への影響は 500Ω でシャントされますから問題になりません。 ゲート側へ行くものも NFB によって減衰しますからそれほど大きくなりません。