エミッタ・フォロアの歪み
エミッタ・フォロアは歪みが少なく、手軽にインピーダンスが変換できるとしてよく使われています。本当にそうでしょうか、検証してみることにします。
右のような一般的な条件を仮定します。
この回路図で、ベース・エミッタ間の電圧 VBE とエミッタ電流 IE の関係は、以前の記事「エミッタフォロアの出力インピーダンス」でかなり正確に測定していますので、そのデータを使うことにします。(前回とは異なるサンプルですのでほんのわずかにパラメータが異なります。)
右のグラフに示した 「Model」 の関数です。
そうすると、入力電圧 Ein と出力電圧 Eout の関係は次のようになります。
Eout = 1000 * I0 * [ exp { (Ein-Eout) * q / (λ*k*T) } - 1]
ここで
I0: 飽和電流、対象トランジスタの固有値(測定結果) 73.60E-15
q: 電子の電荷 1.602E-19
λ: 対象トランジスタの固有値(測定結果) 1.017
k: ボルツマン常数 1.38065E-23
T: 絶対温度 296.16K (21度C)
Ein は 3V のバイアスとサイン波の信号ですから値は分かっています。 なので Eout が計算できます。Eout が両辺にありますが、力まかせに(2分検索法)解きますと次のようなカーブが出てきます。

入力波形は、1 サイクルを 256 点で表現しています。
入力と出力はおよそ 0.6V の差で平行に動いている様子が分かります。
しかし、図ではしっかり見えませんが、正確には下の方の差は上の方の差より狭くなっています。
エミッタ電流が少ないところではベース・エミッタ電圧がわずかに小さくなりますから、サイン波の下の方で入力と出力がわずかに接近するのです。 下側が伸び悩む歪みが含まれています。
その量はどれぐらいなのでしょうか。
それでは解析にかかります。解析用に、上で作った波形を 8 波用意します。 そのバイアス付きのサインカーブを離散フーリエ変換します。
窓はレイズドコサインを使いました。
結果の直流分は無視して、基本波の高さを 0dB として高調波の量を dB で表しました。 IHF の全高調波歪み測定の定義とは少し違いますが、この方がわかりやすいでしょう。
入力波はサインですから直流分と基本波しかありません。 青い線です。
出力は茶色の細い線です。 4Vp-p と 2Vp-p と 0.2Vp-p で計算しました。
3V のバイアスに対して 2/3 を使う 4Vp-p の波では、出力波にかなり 大きな歪みを持っていることが分かります。 0.15% ぐらいの第2高調波量になります。
入力を半分にしてみると歪みは下がります。 0.07% ぐらいです。
0.2Vp-p ぐらいでは 0.01% を切ります。
おおざっぱに言って、飽和しない範囲では、歪みは入力の振幅に比例するようです。
サレン・キー・フィルタなどで簡便にエミッタ・フォロアを使っている例を見ることがありますが、電圧配分によってはちょっと問題視した方がいいかもしれませんね。
