デカップリングの間違い、DC/DC コンバータ
少し前の記事でトランスの歪を測っていた時に使っていたのは、CJDS66 という安いファンクション・ジェネレータで JDS6600 の基板を使ったものでした。
比較的よくできた製品なのですが、いかんせんノイズが非常に多くて、平均値をとるなど測定に苦労しました。
ノイズの性格は複雑で、10MHz~100MHz の成分を含んだスパイク性のもので、高さは 10~50mV もあります。 間隔はマイクロ秒単位。
不思議なことに出力からスコープに直接同軸ケーブルでつなぐと非常に小さくなりますが、途中で芯線が 2cm でもむき出しの場所があると途端に増加します。
そのむき出しの周りの電界を小さくするべく、軽くアルミ箔で覆っても減少しません。 ということは、同軸ケーブルの外皮の外側表面に乗ってきているということです。
グラウンドにスパイクが乗っているとは、何とも厄介なこと。
そこで、ノイズ退治に乗り出すことにしたら、とんでもない設計間違い(たぶん無知からくる間違い)を見つけてしまいました。
それをこの記事にします。 皆さんは同じ間違いをしないように。

右は 5V から 12V を作り出している DC/DC コンバータと、グラウンド関係を示している図です。
N-FET で L1 の出口をグラウンドに落とし、エネルギーを L1 の磁界として蓄え、FET を切ってスパイク状に上昇する電圧を ショットキ・バリア・ダイオードを通して C1 に移します。
そこの電圧を適当にモニタして FET を ON にする時間を制御して電圧を安定化させます。
この領域のグラウンドを Digital Ground と名付けることにします。
それに対して機械の主要な機能は Analog Ground 領域にあり、その2つのグラウンドは一か所の Bridge でつないであります。
ここまでは妥当な設計です。
で、その 12V 出力ですが、長い線路を伝わったのちに C2 によって「デカップリング」され、Analog Ground に落とされます。
ここに問題があります。
SB から出てくるスパイク状の電流は非常に高い高周波成分を含む強い電流です。
それが 12V ラインを伝わって C2 に行き、C2 のグラウンドに流れ込みます。
このため、
Analog Ground の平面は、この部分で電位が上昇し、もはや共通の参照点がなくなってしまいます。
アナログ回路全体が別々の参照電位をもとに動作する羽目になっていしまい、収拾がつかなくなります。
C2 の下側が震源で、地面(Ground)が揺れる地震です。 建物や橋や立っている人間はそれぞれ震源からの距離、地面の固さ、共振/制動/反射の具合によってまちまちな揺れ方をします。
ノイズを下げようとしても手をつけることができません。
この C2 はむしろ無い方がいいのです、右側に 10uH の L と 100uF があるのですから。
(そういうわけでこのページには DeCap という名前を使いました。
De- は off とか in a bad sense とかの意味あいで、de-coupling に引っ掛けた駄洒落。)

右の図は私が改造した後の図なのでわかりにくくて申し訳ないですが、C1 と C2 の位置関係を示します。 C1 は私が追加した銅板のシールドの下にあります。

右の図は改造前に C1 の上側をスコープしたものです。 縦軸は 100mV/div、横軸は 1us/div です。 この時のスコープの参照点は遠く離れた、出力コネクタ近くで、C3 のグラウンド付近に取っていますから、Digital Ground の変動分も含んでいることになります。
C1 に ESR(等価直列抵抗)とインダクタンス分があって、そのせいで非常に大きな電圧が現れています。 0.7Vp-p 程度あります。
この電圧が低いインピーダンスで送り出されて C2 に向かって流れていくわけです。 恐ろしいことです。
スパイクが上側だけでなく下にも振れている理由は、SB ダイオードに接合容量があってそれを通して L1 や C1 のインダクタンス分などと共振して減衰振動するためです。

パワー・ラインを通った後で C2 の端子をスコープしたものが右の図です。
ラインでの高周波の減衰と、C のグラウンドがアナログ側に移ったせいでかなリ低くはなりますが 200mVp-p 残っています。
これも、C3 のグラウンド位置と C2 のグラウンド位置のレベルの差を含んでいます。 もはや何が何だか分からない状態です。

とりあえず対策です。 C1 の ESR を低くするために 0.1u 程度のセラミック・キャパシタで SB の出口を最短距離で落とします。
下の左の図です。
また、これが主要な変更ですが、パワー・ラインにスパイクを流さないように L2 を挿入します。 10uH~20uH 程度でいいでしょう。
あまり大きいと自己共振周波数が低くなり、高い周波数のノイズが阻止できなくなります。 TDK の B82141A1103K000 あたりがいいと思います。
手持ちの 15uH を入れました。
L2 の出口で Analog Ground 側のブリッジに近いところで、低い ESR のキャパシタを使って落とします。 下の右の図です。
このチョークコイルはできれば閉磁路型のほうがノイズ磁界を撒き散らさなくていいでしょう。

さらに、グラウンド・プレーンの面内にできるだけ電位差が生じないように導電度を上げます。
リップル電流の通路を想像して、そこに太い導体を貼り付けます。
導体としては 3C2V 同軸ケーブルの外皮編組線あたりがいいでしょう。 右の図は基板の裏側に張り付けた位置を示しています。
水色の線がボンディングワイヤで、丸印がボンディングした場所です。
特に、C2 と Bridge の中間にコネクタがあって、その一連のスルーホールのためにグラウンドプレーンにスリットができています。
このインピーダンスを下げるためにここには2本入れています。
ボンディングというのは、電位が異なる2つの場所の間を高いコンダクタンスでくっつけることを言います。
470u、L1、FET、C1 の周りは高周波の高い輻射がありましたのでシールドをかぶせておきました。

ここまでの改善で C2 の端子電圧は右のようになりました。 まずまずです。
出力信号上のノイズも以前より大幅に(-30dB以下に)小さくなりました。
でも、まだやれることは残っています。 DC/DC コンバータからは上記の +12V 以外に、-8V、-12V、+3V、+5V が出力されています。
+12V よりはノイズレベルはずっと低いのですが、どうしようか思案中です。
また、外部に 5V のパワーパックがあるのですが、このグラウンドラインに VHF のノイズが乗っています。
これについては、本体内部にトランスとシリーズ・レギュレータを組み込むつもりにしています。 現在 18,000uF 電解キャパシタの入荷待ち。

パワーパックからくるノイズが出力に出てきた例を右に示します(縦 20mV/div、横 20ns/div)。
これは上記のデカップリングとボンディングによる改善後のものです。
スペクトル(ピンクの線)は 20MHz と 60~80MHz と 110~140MHz にブロードな山があります。
このバーストが数十マイクロ秒ごとに不規則にやってきます。
このノイズはシリーズ・レギュレータを使うと無くなります。
勿論、その場合、
整流ダイオードはノイズを出さないようにしておきます。
パワーパック単体で 1A 負荷の時に負荷端のノイズレベルは 200mVp-p もあります。 いただけません。
なお、上のすべての実験ではこのパワーパックは使用していません。
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主題からちょっと外れますが、ついでに。
LCD のスクリーンからもかなりの輻射が出ていました。
これは抑え込むことがむつかしいのですが、40um のステンレス線で作った 250 メッシュの網を LCD の前に貼り付けてグラウンドに落としました。
効果てきめんでした。
文字は若干読みにくくなりますが困難というほどのことはありません。 下の写真のように網に反射があって字がややぼやけてきます。
[2018.04.01 追記]
最終的に内部にシリーズ・レギュレータを組み込んだ図です。
トランスは 5V 2A、ダイオードはショトキの 5A をブリッジ、平滑は 18,000uF、レギュレータは LDO の 5V 2A でヒートシンクを付けています。
トランスには 6.3V 端子もあるのですが、それを使うと LDO への入力が高すぎて消費電力が定格をオーバーします。
トランスはほんとは倒して90度回転した向きがリーケージ・フラックスが基板を通過しなくていいのですが取り付けが面倒でした。
気休めにショートリングを巻いておきました。 まあ、DA 以降の場所とは離れているので大丈夫でしょう。
実際に 60Hz ノイズは -110dbV 以下のホワイトに隠れていて見えません。
基板の電源部の出口の 5V ラインにも
π 型 LC フィルターを入れ、ボンディングもさらに太くして、数本追加しました。
静電シールドとしてケースの床にアルミ箔を貼り、アナログ・グラウンドとつないでいます。 このアルミ箔はトランスやLDOのヒートシンクとはつなぎません。
パネルの PC 板と主基板のグラウンド間の接続は長くて細い線だったので、太くて短い編組線を別途追加しました。
以上でノイズはほぼ抑え込めました。
これもついでの話ですが、中国製品はたいていの場合コネクタの寸法精度が出ていません。
この JDS6600 も例外ではなく、BNC 接栓はグラウンド側の内径が大きすぎて、接触不良になったり、パルスの立ち上がりがなまったりします。
対策は日本製かアメリカ製のコネクタに取り換えてしまうことです。
または、緊急対策として、先端から 8mm ほどの所をニッパで強く挟んで 0.1mm ほどへこませて楕円形にするとうまく接触するようになります。
ただし、これはやりすぎると回復が困難です。
コネクタは押し込む時に力がかかり、主基板にたわみが発生しますが、それに対応する重要なねじが一本省略されていました。
IC のヒートシンクが邪魔で付けられないからでしょう。 ヒートシンクを削ってねじを追加しておきました。
このヒートシンクはかなり熱くなっていましたので銅板で少し拡張し、IC との接触部にはサーマル・コンパウンドを塗っておきました。
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#JDS6600ノイズ低減 #デカップリングの間違い
| (3/23/2018) |  |
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Noise Reduction of JDS6600 or CJDS66 6600
作者: 藤原 武 Tak Fujiwara