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電源ダイオードからノイズ


整流ダイオードはノイズを出します。

右のように簡単な整流回路に電流検出の抵抗(0.15Ω)をかませ、ダイオードに流れる電流を観察してみましょう。


その波形は右のようになります。 入力電圧波形のピーク時だけ、平滑キャパシタへの充電電流が流れます。
  (スコープ目盛り: 100mV/Vdiv, 5ms/Hdiv)

何の変哲もない波形のように見えますが、緑の丸の中をどんどん拡大してみます。  時間軸も拡大しますので注意してください。


そうすると右の図のようなものが見えてきます。
  (スコープ目盛り: 2mV/Vdiv, 2us/Hdiv)

赤い線から下は電流が逆流していることを表しています。
そう、ダイオードは理想的には反対向きには電流を流さないはずなんですが、現実はこうなんです。

理由は、順方向に流れているときは、PN 接合の両側それぞれの中にマイノリティーキャリアがあって、それが電流を運んでおり、 時間が経って逆向きの電圧になっても、マイノリティーキャリアは、周りのマジョリティキャリアと再結合して消滅するまでに時間がかかるのが原因です。
消えて無くなるまで、キャリアが存在するため電流が流れるのですが、逆方向の電圧ですから、逆方向に流れる、という当たり前のことが発生しています。
この逆に流れている期間のことを、ダイオードの 「逆方向回復時間 (Reverse Recovery Time)」 又は単に 「逆回復時間」 といいます。 仕様では上のようなサイン波ではなくパルスのステップ応答を使って規定します。

それで、まあ逆方向に流れるのはよしとして、問題は別の所にあります。 キャリアが消滅した瞬間に電流が突然切れます。  図でも、突然0に上がろうとしていますが、あまりに急激であるため、浮遊インダクタンスのおかげでするどく跳ね上がっている様子が分かります。

この切れた瞬間の鋭いインパルスは高い周波数成分を多く含んでおり、周りにノイズをまき散らします


その部分を捕まえて FFT にかけてみますと、下の左の図の紫色のカーブになります。

(FFT: 10dB/div, -70dBV@center, 1MHz span, 500kHz@center)

-85dBV ほどのレベルが 1MHz 以上まで続いている様子が分かります。 AM のラジオの周波数帯ですね。  ザーというノイズになります。 コンピュータの電源などで大電流を扱うダイオードでは、コンピュータが誤動作することもあります。

ダイオードに並列に 0.1uF をできるだけ短距離につないでやると、右側のようになります。  高い周波数を吸収して、特定の低い周波数に共振させてエネルギーをバンド全体にばらまかないようにするわけです。

スペクトルも 20dB 下がったように見えますが、実はこのレベルは測定系の残留ノイズレベルで、実際には 「見えなくなった」 といっていいでしょう。


ダイオードにはいろんな種類があります。 上で使ったのは比較的接合容量の大きい PN ダイオードでした。 種類ごとにノイズの発生も異なりますから、経験を重ねることが必要です。
ショットキダイオードはマジョリティキャリアだけで動作しますので消滅時間はほとんど無く、接合容量だけが問題になります。



[余談]
我家は都市の外辺にあって、新しい家がたくさんできた割に配電線の状態が改善されていません。
なもんですから、壁のコンセントの電圧波形も右の図のように頭がつぶれていて、高調波がたくさん乗っています。 
この波形は、インバータなどの電力を使う機器のように、コンデンサインプットの整流回路を使っていると波の頭だけ電力消費を起こすので、それが原因です。 
昔は電力を使うものは電熱機器やインダクションモータなどが多かったのですが、最近は一度直流に換えてから電力を使うものが増えてきました。  まあやむをえない気もしますが。。。  以前は電力線はきれいな波形をしていて、0.1% 以下の歪みでした。

このことが分かったきっかけは上の実験でした。  充電電流が予想よりかなり小さかったし、波形が頭がつぶれていて伸び悩んでいたので、おお元の電圧を観察してみたら歪んでいたというわけです。
(関西電力さん、何とかしてください。)