MastHead

3 Pole アクティブフィルタと、各種フィルタ名

(注意: 以下の記事を掲載後 「7次までのフィルタの楽々設計」 の記事を書いており、そこにあるエクセルの方が高性能です。)

フィルターが続きましたので、もうひとつ3次のアクティブフィルタを紹介しておきます。 エクセル計算表も付けておきます。

これまでにたくさんフィルタが出てきましたので、後半では名前と特徴をまとめておきます。


それでは3次のアクティブフィルタの特性です。 右図の回路の入出力特性を計算したものです。
例えばベッセル特性だと下のグラフになります。



3次ですから周波数が上の方では傾斜が 18dB/oct で下がっています。

エクセルのシートはこれです。==>
   (IE: 右クリックし「対象をファイルに保存」を選ぶ)
   (FireFox: 左クリックし、保存する)
これは解析のみです。 いくつかサンプルの係数は入れておきましたが、任意の値での設計はできません。

(注: 追記 11/22/2006    設計できるようにしました。 この ==> ページをみてください。)


オペアンプの裸ゲインが下がってしまう領域では計算カーブからはずれます。 注意してください。

------------------------------------------------------------

さて、多くのフィルタの特性と、それらに付いている名前を整理しておきます。 主として5次のフィルタを取り上げ、傾斜が緩いものから急なものへ並べます。 (Elliptic は分母5次分子4次) 下の図は -60dB まで広げて裾の方が見える様にしていますが、リップルがよく見えないので肩を拡大した図もその下に示します。


Bessel(オレンジ)
考案者は Friedrich Wilhelm Bessel。
傾斜が緩やかですが、群遅延時間が帯域内でできるだけフラットになる様に定数を選んだものがベッセルです。 トムソン(Thomson)フィルタとか Bessel-Thomson filter とも呼ばれています。
この図のカーブは、分母の多項式
  (S+3.646739)*
  (S^2+6.703912S+14.272476)*
  (S^2+4.649348S+18.156314)
を ω=0 で 0dB と、 ω=1 で -3.01dB  に正規化したものです。 
5次ですので、ωが大きいところでは 30dB/oct で落ちます。
ベッセルフィルタでは、次数を大きくしても通過域での特性はほとんど変わりません。
パルスの伝送で波形をできるだけ崩したくないときに使います。 

Butterworth(青)
考案者は Steven Butterworth。
通過帯域内でできるだけ出力電圧が平坦になる様に定数を選んだものがバタワースです。 最平坦特性フィルタとも呼ばれます。
このカーブは、多項式で
  (S+1)*
  (S^2+0.6180340S+1)*
  (S^2+1.6180340S+1)
を 0dB で正規化したものです。
バタワースでは次数が高くなると通過域での肩の特性は、次数の低いときに比べて少し持ち上がります。

Legendre-Papoulis (ピンク)
考案者は Athanasios Papoulis。
リジェンダ(ルジャンドル)・パポウリスとか、L-filter とか Optimum filter とか、最適フィルタとか呼ばれますが、同じものです。 第1種 Legendre (ルジャンドル)多項式で近似したところからこの名前が付いています。
周波数が上がったときに一様に減衰し、ω=0 で 0dB で、かつ遷移域での傾斜が一番急なフィルタです。 一様減衰が必要なときに使います。
遷移域の急傾斜を得るために、通過域でやや下がる犠牲があります。
このカーブは、多項式で
  (S+0.4680899)*
  (S^2+0.3071734S+0.9608963)*
  (S^2+0.7762796S+0.4971406)
を 0dB で正規化したものです。

Chebyshev Type I (空色)
考案者は Pafnuty Lvovich Chebyshev (Чебышёв)。 英語の綴りかたは定まっていなくて、Tchebysheff と書くこともあります。
チェビシェフ多項式を使って近似したものです。 通過帯域内にリップルを持ち、阻止帯域では一様に減衰するものを Type I と呼んでいます。  また単に「チェビシェフ」と呼んだときは Type I のことがほとんどです。
リップルを持たせて肩を持ち上げますから、チェビシェフでは必ずリップル量を併記します。 この図の場合は 1dB です。 また、通過帯上限は -3dB ではなく、リップル限界、すなわちこの場合は -1dB で表すのが一般的です。 チェビシェフの特徴は、通過域から阻止域への遷移が急峻であることです。
チェビシェフでは、奇数次のものは ω=0 で 0dB の減衰ですが、偶数次のものはリップル量だけ下がっています。 これを嫌うときは、Modified Chebyshev にしますが、阻止域の減衰特性が犠牲になります。
図に示したカーブは、多項式で
  (S+0.2894233)*
  (S^2+0.4684101S+0.4292979)*
  (S^2+0.1789167S+0.9883149)
を 0dB で正規化したものです。

Chebyshev Type II (焦茶色)
Type I とは逆に、通過域では平坦な特性(ワグナー特性)で、阻止域でリップルを持たせたものです。
Type I を単純に「チェビシェフ」と呼ぶ人は、 Type II のことを「逆チェビシェフ」と呼びます。
チェビシェフ Type II は、阻止域にあらかじめ分かっている妨害波がある時に使います。 阻止域にヌルが存在するので、ωがずっと大きい所では 30dB/oct で落ちないという犠牲があります。 この図では5つの内2つが相殺されていますから1つが残り、6dB/oct になります。
図のカーブは、0.1dB リップルの Type I のチェビシェフを計算し、それを上下左右ひっくり返して描きました。 阻止域の山は -19.36dB になります。
すなわち
  (S+0.5389143)*
  (S^2+0.8719817S+0.6359202)*
  (S^2+0.3330674S+1.1949371)
の多項式をωを逆数にしてもとめて正規化しておき、
  Gain(Type II) = sqrt ( 1 - Gain(Type I) ^2 )
としています。 ω=1 で -3.01dB になる様に正規化しています。

Elliptic (緑)
考案者は Wilhelm Cauer。
通過域と阻止域の両方にリップルがある特性のフィルタです。 楕円関数フィルタとか、連立チビシェフフィルタとか Cauer filter とか呼ばれています。  近似多項式の中にヤコウビ(Jacobi) の楕円関数(第1種完全楕円積分)が出てきますのでこの名前があります。
遷移域でもっとも急峻な落ち方をしますので、少ない次数(部品数)でよく落ちるフィルタを作りたいときに使います。  しかし、位相特性や群遅延時間特性はむちゃくちゃになって、犠牲となります。
図のカーブは5次のフィルタで、通過域のリップルを 0.5dB、阻止域の最大値を -50dB 以下、通過域と阻止域の周波数比を 1.5 として設計したものです。 
このカーブは伝達関数として、Null を受け持つ分子側を4次式で
    (S^2+2.42551) (S^2+5.43764)
通過域のリップルでの持ち上げを受け持つ分母側を5次式で
    (S^2+0.16346S+1.03189) (S^2+0.57023S+0.57601) (S+0.42590)
として描きました。 DC を 0dB として正規化しています。

最後に、その式の S に jω ではなく、複素数(σ,jω) を入れて計算したグラフをお見せします。 (-4,j0.1) から (0,j10) まで計算してみました。 対数のため (-0.4259,j0) のポールが入っていませんが、図には2つポールが見えています。 また jω 軸上に Null も2つ見えています。 ポールはσが負の領域に5つあり、原点を中心として楕円状に並ぶのですが、右の方にある2つが見えているのです。
赤の線は私がなぞって書き込みました。 立体曲面を σ=0 の面で縦に切ったときの切り口で、この線がフィルタの周波数特性になります。


ポールの位置をσ=0 に近い方に動かすと、リップルが増えることが分かります。 楕円を扁平にするということです。
少し Art らしい絵が描けました。

[余談]
上の立体図を上方から見下ろして、かつ、対数にしていない図が右の絵です。  上図では右の図の Z1、Z2 のヌルと、P1、P2 の柱(ポール)が見えています。 P3 は対数のグラフですから見えません。
こうしてみると、Pole は「極」というより「柱」のポールですよね。 「極」と最初に邦訳したのは間違いじゃあないのかな?

ここでちょっと電子回路を離れて、別のことを考えてみます。
jω は下の方にも伸びています。 σ軸をはさんで上下が対称です。
ωは周波数ですから、元(げん:Dimension)は時間分の1ですので、上に行くと時間が狭まるのは分かります。  では下は何でしょうか????
周波数が負?

時間に「負」の概念はあるのでしょうか。
このように、数式を解いていくと時間が負になる領域がときおり出てきます。  またそういうときは、必ずと言っていいほど、正の領域と対称になっています。  学校では「時間は負にならないから正の領域だけを解とする」と習いますが、本当にそうでしょうか。

時間はいつも未来の方向にしか流れません。 なぜなんでしょうね。  遠い未来に、宇宙がビッグクランチになるときには時間は逆流するのでしょうかね。  でも、かりにその時に人間がいるとして、その体内時計も逆に流れるのだから、時間が逆に流れる感覚は無いのでしょうか。
興味のある人のために、時間についての一般的な読み物をあげておきます。(私の本棚から)
・ A Brief History of Time, Stephen W. Hawking, BANTAM, ISBN 0-553-05340-X
・ 時間の矢, リチャード・モリス, 地人選書, ISBN 4-8052-0252-1
・ 時間の話, アレクザンダー・ウォー, はまの出版, ISBN 4-89361-3197 (あまり面白くない)
・ 光速より速い光, ジョアオ・マゲイジョ, NHK出版, ISBN 4-1480841-1
・ エレガントな宇宙, ブライアン・グリーン, 草思社, ISBN 4-7942-1109-0
・ 時間について、 ポール・デイヴィス、早川書房、ISBN4-15-208063-9
・ 自然界の非対称性, フランク・クロース, 紀伊國屋書店, ISBN 4-314-00908-X
・ 自然界における左と右, マーティン・ガードナー, 紀伊國屋書店, ISBN 4-314-00576-9

特に、マゲイジョとグリーンは非常にいい本です。