ゼナーダイオードはノイズ源
昔、ゼナーダイオードからのノイズに見舞われたことがあったので、それを思い出してちょっと測定してみました。
一般にゼナーダイオードと呼ばれているものには2種類あって、大まかに 6V 以上のものは電子雪崩を使ったアバランチダイオード、ほぼ 5V 以下のものはゼナー特性を使ったゼナーダイオードです。
それぞれ特徴があって:
ゼナー電圧の温度特性は負、肩特性はなだらか、雑音は少ない、ことに対して、
アバランチ電圧の温度特性は正、肩特性は急峻、雑音は多い、といえます。
6V と 5V の間でゼナーとアバランチが交差するところがあり、肩特性をうまく利用し負荷電流を調整して探り出せば、温度特性がゼロに近い定電圧源を実現できます。
(私は東芝の 250mW のダイオード選別して 5.4V 程度になるような電流を流してやります。)アバランチ電圧の温度特性は正、肩特性は急峻、雑音は多い、といえます。
前置きはそのぐらいにして、雑音を調べてみます。

プリアンプを用意しました。 ゲインは 70dB で、バンド幅は 1Hz-50kHz のフラットの特性です。
ゼナーには 1kΩ を通して 10V をかけます。
この後ろにオシロをつなぎますが、その帯域が(絞っても)25MHz あるのでオシロ自体のノイズも若干乗っています。

まず測定系のノイズレベルですが、右の図です。 入力はショートしています。
H: 1ms/div V: 50mV/div
ですから、目の子で測って、入力換算でおよそ 1.5uVrms 位になるようです。
オシロのノイズを差し引くと 5-6nV/√Hz 程度ですから、まあ悪くないでしょう。
以下の測定は最後のスペクトルの図以外はすべて軸を固定して比較できるようにしています。

6.8V のアバランチ(Avalanche)をつないでみましたら、右のようになります。
まあ盛大にノイズが出ています。
ちょっとノイズ源のインピーダンスを見てみましたら 20Ω 程度の低い値です。

5.1V のゼナー(Zener)をつないでみましたら右のようになりました。 アバランチよりかなり少ないノイズレベルです。

おもしろ半分に band-gap reference voltage generator (1.23V) をつないでみたところ、すごいことになっていました。 この図です。
スクリーンをはみだしています。
バンドギャップはずっとおとなしい素子だとばかり思っていましたので、裏切られた思いです。

最初の 6.8V のアバランチダイオードですが、これに 100uF の電解コンデンサを並列につないでノイズをバイパスさせてやると右の図のようになります。
ずいぶん良くなりました。
10uF の様な小さい値でも、高域だけなら良くすることができます。

最初のアバランチダイオードが出しているノイズのスペクトルを見てみましょうか。
H: Span 100kHz, 50kHz center
V: 10dB/div, -40dBV center
Sample: 500kSa/s (Nyquist freq.= 250kHz)
Window: Rectangle
の図です。 下側の紫のトレースが FFT の結果のグラフです。
ついでに、プリアンプの帯域を 10MHz に延ばしてみましたら、そのままノイズも 10MHz までついてきました。 ということは、もっとずっーと上まで伸びているということですね。 ある人に言わせると「 VHF のホワイトノイズ源に使える」 とか。
ひとつ付け加えるのを忘れていましたが、ノイズ電圧はゼナー(アバランチ)電圧に比例します。
他方、ノイズの加算は √(Vn1^2+Vn2^2) でしたから、もし 15V がほしいときは、15V のダイオードを使うのではなく、7V と 8V を直列に使うと 3dB ほどノイズを低くすることができます。 (みみっちいですかね)
まとめ:
ゼナーよりアバランチの方がノイズが大きい。
並列にケミコンを入れてノイズを下げることができる。
バンドギャップダイオードはひどいノイズを出す。
2段重ねにすると少しノイズを下げることができる。
ノイズの帯域はものすごく広い。
ノイズ源のインピーダンスは低い。

[余談]
どうしてもノイズの少ない定電圧がほしい人には、こんなのはどうでしょうか。 Burr Brown からの提案です。
複数のダイオードのノイズを平均して相対的に小さくし、さらに、オペアンプのノイズもまとめてノイズレベルを小さくするために出力にフィルタをかませます。 インピーダンスが高くなった分は NFB で落とし込みます。
OpAmp の + 入力端子をキャパシタで落とすとノイズは小さくなりますが、漏れ電流による電圧誤差が現れます。 ですから、もしやるならリークのないキャパシタを使ってください。
