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電源電圧が動いても周波数が動かない発振器


水晶を使った発振器はかなり安定ですが、それでも少しは周波数が変動します。

水晶発振回路の周波数変動要因はいくつかあります。

 1.水晶自体の温度特性
 2.保持機構の経年変化
 3.負荷容量の変化

といったところでしょうか。
1番目は水晶メーカの腕の見せ所で、ユーザ側ではどうにもできません。 カット面角度や振動モードの違いなどでいろいろな温度特性を持ちます。  ユーザがやるとすると、まあ恒温槽に入れるぐらいでしょうか。
2番目もメーカ次第です。 窒素を封入したり、支える方法を工夫します。

3番目がユーザとして何とかしなければならないものです。

負荷容量の変化は、キャパシタの温度による変化や、ドライブしているトランジスタの浮遊容量の対電圧特性があります。
前者は部品の温度特性がいいものを選ぶとして、後者については回路を工夫する必要があります。

図1を見てください。
水晶から外を見込んだときに負荷容量を構成するものは、
1.下側の 15pF と、
2.ドレインにある 15pF が主なものです。
そのほかに
3.FET のゲート・ソース容量と、
4.ゲート・ドレイン間のミラー容量と、
5.次段のゲート・ドレイン容量があります。
次段のゲート・ソース容量は、ソースフォロアなのでほとんど効きません。 無視できます。

3,4,5,が電圧依存性のあるものですが、このうちで飛抜けて影響するのは4番です。  2SK125 の Crss は2.6pF ほどですが、それが増幅率だけ倍増されますから、20pF 程度になることもあります。
都合が悪いことに、これはジャンクション容量なので、ドレイン電圧が高くなると容量が小さくなるという電圧依存性のかなり大きい要素となっています。


ではどうすればいいでしょうか。
幸いなことに、FET の電圧増幅率はかなり大きいので、ルーズカップルを取入れ、水晶からトランジスタを見込んだときの容量をマスクして見えにくくしてしまえばいいわけです。

図2を見てください。
ドレインもゲートも 120pF という大きな値で落しています。  こうすれば、少々ドレイン・ゲート間容量が変化しても、その影響する割合が小さくてすみます。
ドレインとゲートから落す容量を増やしただけでは、水晶から外を見た負荷容量が大きすぎるので、直列に本来の負荷容量相当の C を入れます。 こうするとドレインからゲートに戻す電圧は電圧分割されますので、むやみに 120pF を大きくすると発振が停止します。 妥協点を探っていい値をとります。

この構成で、2SK125 を使ったときでも、図1に比べてほぼ 10 分の1まで改善されますが、さらによくするため Dual Gate の FET を使って、ドレイン・ゲート間を分離してみたのが図2です。 さらに半分になります。

測定してみましょう。
10V から 11V に電源電圧が変動したときに、改善前の回路では 5ppm の変動がありますが、改善後は 0.28ppmに落とし込むことができました。

こうした対策を取った後で電源を安定化すれば鬼に金棒です。
メデタシ、メデタシ。

もっと追求したい人は、ドレインの負荷をコイルにしてゲインを上げ、 120pF X2 を 330pF X2 にするとさらに半分ぐらいにできます。
このときバイアスがクリティカルになりますので、ソース側に安定化の抵抗(とバイパスキャパシタ)を入れた設計にした方がいいでしょう。  次段との結合も動作点が上がってしまいますから、適当にカップリング方法を変更してください。

いずれも、温度特性を決めるのは 15pF のトリマになりますから、ここはしっかりと温度特性のいいものにしてください。   図2の回路はルーズカップルの効果を検証するためだけの目的で作ったので、 Idss の個体差などを考慮していません。  そこのところをご理解の上、ご自分の設計に反映してください。



ところで、ここで使った 14.31818M という周波数ですが、 これは特別のものです。
テレビのカラーバーストの信号は 「テレビジョン放送に関する送信の標準形式」 という省令によって 3.579545MHz と規定されているのですが、それの4倍の周波数になります。
水平同期の周波数はカラーバーストの 455 分の2です。 垂直同期は水平の 525 分の2になります。
これらの同期信号をうまく作り出すには 14.31818MHz というのは最小公倍数となる都合のいい数字なのです。

水晶は切る角度によって温度特性が変わりますが、比較的広い温度範囲で安定で3次のカーブを持つものが AT Cut と呼ばれます。  この写真のように手前の面に垂直な軸である X 軸に35.25度の傾きを持った面(名刺の面)です。  もう少し、0.01 度から 0.05 度、大きく傾けると3次カーブのうねりがより大きくなります。