セラミックキャパシタは電圧で容量が変わる
セラミックキャパシタは、電圧をかけると容量が変わります 。

これはあまり知られていない性質で、最近のセラミックキャパシタのカタログにもその説明がないことが多くなっています。
私が初めてそのトラブルにあったのは、ある業者から部品の良さを証明するために受け取ったデモ用の基板でした。
低周波増幅器を実装してあったのですが、1kHz における歪率はとても良い特性でした。 しかし、もっと 低い周波数で歪みがどんどん悪くなっていくのです。 (といっても高忠実増幅のことですから、0.01%-0.1% という値の話をしています) 「こりゃ、製品の悪さをデモしてるんかいな」 とぶつぶつ言いながらそのデモ基板をデバッグしました。 提供部品は悪くないことをあらかじめ自分の実験で知っていましたので、そのほかの基板回路に問題があるのは明らかでした。
なかなか解りませんでしたが、ついに、中で使用しているカップリングキャパシタに問題があることが解りました。 そのリアクタンスは Xc=1/(ωC) ですから、ωが小さくなると Xc が大きくなり、カップリングで若干の減衰が起こります。 その減衰分はキャパシタの両端に電圧としてかかっているのですが、振幅の大きい所と、小さいところで容量が異なり、通過電圧の比が違いますので歪みとなるのです。 直流バイアスがかかっていれば偶数次歪みとなり、バイアスがなければ奇数次の歪みとなります。

それでは、量的にはどの程度の影響があるのでしょうか。
手元にあるキャパシタを3つ取り上げて調べてみました(写真)。 2つはセラミックで、0.05u と 0.01u、1つは参考用の 0.01u のポリプロピレンです。
容量測定用に簡単なハートレイ発振回路を組んでキャパシタにかけた電圧を変化させて周波数を見ました。
容量が大きくて発振しにくかったので FET を2つパラレルにして gm を上げています。
右に容量の変化を示します。

容量変化のグラフをみると、10V かけると 1割近く容量が減ることが解ります。 これがチタン酸バリウムの特性なのです。
もちろん、組成により変化率はいろいろに変わりますが、変化することに変わりはありません。
ポリプロでは変化していません。
信号をバイパスさせるキャパシタ、信号を通過させるキャパシタ両方とも C の値が電圧とともに変化することをお忘れなく。 Xc がある程度存在して交流電圧がかかるなら、セラミックを使うとリスクがあります。
また、共振回路ではとても大きな電圧になりますので無視できないことがよくあります。
図2にいくつかセラミックを使うときに注意すべき例を示します。
A はまさしく私がはまったものです。
B はハイパスフィルタですが、このキャパシタはカットオフ周波数付近以下では、両端に電圧がかかりますから、歪みを誘起します。
C はエミッタのバイパスですが、Xc が大きくなる付近以下の周波数では振幅が上に振った時に容量が下がります。 ですから、ベースが上がるときにゲインが下がり、コレクタ出力は下側がのびなくて偶数歪みが出ます。
D は送信機の出力段で、πマッチ回路ですが、このキャパシタはとても大きな電圧を扱います。 直流のバイアスがかかっていますので、偶数次のスプリアスが出てきます。

あなたの回路は大丈夫ですか?
[追記]

上の記事を書いてからしばらく経って Murata のチップキャパシタ GRM シリーズの特性図を見つけました。
右のグラフです。
組成によって様々なカーブになります。
