なぜ Twisted Pair を使うか
右の写真は Ethernet に使われる Category 5 のケーブルのシースを開けてみたものです。
オレンジのペアが TX (送信)、緑のペアが RX (受信)の信号です。 (受ける方では逆ですね)青と茶色は 100Mbps の Ethernet では通常は使われません。
Twisted Pair は日本語では撚り対線(よりついせん)といいますが、ツイステッドペアの方が通りがいいようです。
図1を見てください。
いま平行線が信号を伝搬しているとします。 両側は2線間になにがしかのインピーダンスが存在して、信号電流が流れます。 ここで、遠くから、トランスや別の信号から発生する磁束 H がやってきて、2線間を通り抜けたとします。 磁束が時間とともに増える方向ならば、磁束を打ち消す向き、つまり赤い矢印方向の電流を誘起します。 これはそのまま外来ノイズ電流になるわけです。

それでは、図2の様に撚ってみます。
Aを通り抜けるときも、Bを通り抜けるときも反時計回りの電流が誘起されますが、線が反対になっていますので、面積が同じならちょうど打ち消し合ってノイズは帳消しになるわけです。
ですから、起源が磁束のノイズに対しては、Twisted Pair はかなり効果があります。 ただし、磁束の発生源が離れていて、均一だと見なせることや、撚りが平均していることが必要です。
ここまでは受けるノイズの話でしたが、ノイズをまき散らす方も同じ原理で少なくできます。
その両方が絡んでいることもあります。
もとの写真をよく見て頂くと、緑とオレンジでは撚る回数が違っているのが分かります。 3対2程度になっています。
図3を見てください。
緑の線が送信の信号を運んでいるとします。 A と C は同じ向きの磁束を発生させ、B は反対向きになります。
すぐ隣にオレンジの受信線があったとしますと、これらの磁束はオレンジの線間を通り抜けますが、撚る回数を管理しますと、P と Q に発生する緑からのクロストークノイズをうまく打ち消すことが分かります。
CAT5 の線はこのようになっていますが、もっと高い周波数を取り扱う CAT5+ では青と茶色についてもきちんと配慮がなされています。
起源が電界のノイズでは事情が若干異なります。 電界によるノイズは、より近い導体により大きな電圧を誘起します。 ですから撚ってあるとどちらの導体にも同じ程度の電圧を誘起して、終端が差動入力であれば相殺することになります。 しかし、LAN の入力は差動ではないのでこの効果は期待できません。
こういったノイズの受け渡しの原理を知っていると、プリント配線上でもうまくノイズをさばくことができることがあります。 そのあたりは玄人としての腕の見せ所です。
ここまではノイズの受け渡しの話でしたが、ツイステッドペアの重要な性質にインピーダンスが一定であること、ということがあります。
2本の線がよってあるため、比較的どの位置をとっても線間の静電容量が一定しています。 (もちろん前提としてコーティング厚さが一定でないといけませんが) また、接近しているために電界はその間に閉じこめられやすい構造になっています。 このため、特性インピーダンスが設計しやすく、また比較的一定になります。
簡単な伝送線によく使われるのはそのせいでもあります。
[余談]

右の写真は大型コンピュータの、高密度実装基板に使われる伝送線としてのツイステッドペアです。 基板は 70cm 四方ぐらいあって、20 層を重ねたものですが、そのプリント配線に技術変更が入った場合はこのツイステッドペアで配線します。 1980 年頃の技術です。
詳しい仕様は忘れましたが、いまマイクロメータで測ってみますと 線径が 35um、ウレタン皮膜の外側で 95um 程度です。 インピーダンスは 90Ω ではなかったかと記憶しています。
下に見える目盛りは 1mm 間隔です。
パルス信号の電磁界はこの2本の線間に閉じこめられて伝送されるわけです。
