MastHead

トランスインピーダンスアンプをもう少し低雑音に (改訂版)


(以前の記事に私の誤解が入っていましたので、全面的に書き直しました。 2019年5月16日)



究極まで低雑音化を推し進めていくと、「あと 1dB だけほしい」などという局面があるかもしれませんね。  ひょっとしたら使えるかもしれない回路の紹介です。

トランス・インピーダンス・アンプ(TIA)というのは、電流の入力を受けて、電圧で出力するアンプです。  低ノイズアンプ(LNA)の実現形態の一つになります。 増幅率は V/A なので Ω の単位になります。  右の図に一例を示します。
利点は、低ノイズで、速度の速い反応をすることです。  この図では、受光素子の電流を、高いレジスタンスで NFB をかけたオペアンプの反転入力に入れています。  2uA の入力は 200mV の出力になります。
上の回路を右のようにしてみます。 100k を 2 つに分けただけです。 出力は 200mV のままになるはずです。  この変更によってトランスインピーダンスの形ではなくなっていますが、ご容赦を。

この2つの回路を実験に使いますが、受光素子はオレンジ色の LED を使いました。  LED は、自身が発光するときよりも短い波長(高エネルギー)の光が入ると電流を発生させる光電素子でもあります。
実験してみましょう。

受光素子に頭を突き合わせて高輝度の白色 LED を配置し、1kHz で On/Off させます。

この右の図は 100k 一つの時です。 200mV 出ています。 (50mV/div, AC Coupled)
この右の図は 50k 2つに分けた場合です。 同じように 200mV 出ています。
信号のレベルに関しては同等であることが分かります。
2つに分けたら何がいいかというと、右の図を見てください。  オペアンプの入力ノイズ電流が抵抗に流れたときにノイズ電圧になります。  100k 一つの時は IN2*100k の入力のノイズ電圧に変わりますが、2つに分散させると IN1*50k と IN2*50k の和になります。
2つは同じ程度の量ですが、この和は、ノイズがランダム信号で、かつ IN1 と IN2 の間には相関関係がありませんから、1.4 倍にしかなりません。  抵抗は半分にしていますから、元の 0.7 倍です。 -3dB 改善されることになります。 ほんとにそうなるでしょうか。
実際にノイズ信号を入れて実験したいところですが、ノイズ信号は電圧の測定が大雑把にしかできないので代わりの信号を使ってみます。  いろいろ考えて思いつきました。  サイン波2つで、位相を 90 度ずらしたものは足すと 1.4倍になりますから、それを使ってみましょう。
(90度ずらせたサイン波は、コサイン波ともいいます)
右の図は、その2つの原信号を黄色と緑のトレースで見たところです。 ピンクの線は足し算をした結果です。  1.4倍になっていますね。

位相を確認しておきます。 下のように接続してリサージュを描かせてみます。
 
ちゃんと90度になっています。 ノイズ代替え信号の用意ができました。

まず、100k 一つの時に、1MΩを通して定電流に近い形にして 1Vp-p のサイン波を注入してみました。
 
出力は 100mVp-p きちんとでています。

それでは、いよいよ2つのノイズ信号を与えてみます。 抵抗は半分にしてあります。

1M でなく 950k にしてあるのは、理想的な定電流でないための補正です。
70mVp-p になりました。 無事、ノイズレベルが -3dB になったことが分かりました。

めでたしめでたし。

欠点: 下側の 50k によって電圧が発生するので、浮遊容量を充電する分だけ帯域が狭くなります。  この影響が問題でない応用の時にだけ利用価値があります。
注意点の2つ目として、オペアンプの入力ノイズ電圧に対しては効果がないことに気を付けてください。