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トランスからの漏れ磁束、そのベクトルと量

トランスから出る磁束はノイズの発生源ですが、実際に漏れ磁束はどの方向にどの程度出ているか実験してみました。
よく技術系の雑誌などに右のような書き方をしていることがあります。 このような図を使って「X 方向が最大です。 Y と Z は小さいです」などと書いています。  私はいつもそのような書き方をしている記事に会うと「もっとしっかり書いてあげなきゃ」とはげましたくなる思いを持っていました。  出口だけではなく、磁束はループになっているのですから経路も重要です。
この際ちゃんと測定して網羅しておきます。
とは言いっても、左の図に一部描いてみたように、X だけ取り上げても無限にありますので何とか絞り込んだものにします。

X 方向に出た磁束は四方八方に散るわけですが、EI コアのトランスはおおむね前後が対称で左右も対称なので 1/4 だけを考えることにします。  Y と Z についても同様です。  無限に多くは描けませんので垂直方向の面だけを考えることにします。
そうすると、下の3つの図で、赤、緑、青、オレンジ、紫、茶の面に沿った磁束のループに絞られます。 

測定は現実的な場所として、トランス表面から検出器中心までの距離を一定にして 15mm とします。  右の図に表した9つのベクトルのフラックスが作る誘導電圧をすべて測定します。  例えば 6 のフラックスなら下の左の図のように検出器のループを配置するわけです。 検出器については後述します。
測定して p-p 値を取ると次のようになりました。
 1: 260 mVp-p
 2:  10
 3:  10
 4:  12
 5:   2
 6: 180
 7:  14
 8:   4
 9: 200

1が最悪です。 9と6がそれより少し良い値ですがかなり大きくなっています。
2、3、4、7 は良い値ですが、位置が 1~2mmずれたり、検出器が少し傾いたりすると途端に 5 倍 10 倍になります。 軸上以外のフラックスが入ってくるせいです。
5、8もある程度変動しますが、2、3、4、7ほどではありません。

例えば 7 は比較的良いですが、避けるべきです。 理由は右の図で明らかです。  プリント基板上の位置がわずかでもずれた場所ではフラックスが通過しますから、その様子を描いてみました。

以上から、もしプリント基板のような磁束を貫かせたくないものを配置するなら、 B 点でベクトル5に直角な面(ベクトル4と6を含む面)に置くか、 C 点でベクトル 8 に直角な面(ベクトル7と9を含む面)に置くといいでしょう。
下の図のようにコイルの軸である X を、面の延長内に含むように置くといいのです。 この図中の2面以外にその中間も OK です。
PC 板の延長面内に X 軸を置ける状態は放射状にたくさんありますが、どれでも同じです。
もちろんトランスから離せば離すほど磁界は弱まります。

下の図は 1 で検出した波形です。 驚きました。 奇数次の高調波がいっぱいです。  これは、トランスのコイルと検出器のコイルが離れていて相互インダクタンスが小さく、かつ検出器のインダクタンスが小さいため、 サイン波の傾斜部分(di/dt の大きい部分)の伝達が優勢になるためです。


測定に使ったセンサーは何十年も前の黒電話の漏洩磁界を拾ってスピーカを鳴らすためのものです。  たくさん入手して、永年屋外でボイラーのポンプなど多くのモータ類の監視に使っていました。 内部抵抗は 1kΩ程です。
30mH の開磁路型のチョークも試しましたが、同じような結果です。
これの中心を、どの測定点でもトランス本体の表面から 15mm の距離を保って測りました。
100V からの電界の誘導を避けるため、アルミフォイルで電界シールドをしていますが、これによって磁束は減らないことは確認済みです。  (商用周波でアルミフォイルの電磁シールド効果は皆無ということ)
途中に下図のように 300Hz ほどの一次のハイカットフィルタを入れています。


ついでにショートリングがどの程度効果があるか実験しておきました。 t=0.3、w=15 の帯を巻きます。  長さは 155 でしたから、抵抗値は 0.6mΩ程度です。  上記の 1 のベクトルを同じ条件で測定してみると、、、なんと、1~2% 程度しか落ちていませんでした。  銅線のコイル部分は磁束を通しますから、その空間を通って磁気のループができているわけです。  それに対して、ショートリングの外側の 9 の位置では 15%、6 の位置では 11% の落ちでした。  総じて商用周波ではあまり効果は無いということですね。

このトランスは 14V/16V 0.4A の仕様ですが、上の実験すべてで負荷がない時のほうが漏れ磁束は大きくなります。  5W 程度負荷抵抗に食わせてやると 2 割ほど小さくなります。 これは二次側の電流が反対方向に磁束を生むためです。


上記で、トランスから外に出ているフラックスを受けないように PC 板の方向を考えるように書きましたが、そのほかにも気を付けることがあります。
例えば、金属でできた板(シャーシやケースなど)をフラックスが突き抜けようとすると、その板の中に渦電流が発生します。  増加するフラックスに対して、右ねじ方向に回転する渦です。  導体は抵抗がありますから、渦電流の方向に電位差が生じます。
いまリバイバルになってきた真空管アンプを考えましょうか。  入力端子のグラウンド側を、その端子のそばでシャーシにつないで落とし(A点)、カソードのバイパスキャパシタを、真空管ソケットの横でシャーシに落とした(B点)とします。  この2つの点は異なりますから、近くをフラックスが抜けているようなら、2点間にはハムの電位差が発生します。 ですから S/N が下がらなくなる現象が現れます。
この 2 つを別の点で落とすのは間違いで、一度一緒にしてからシャーシにつなぎます。 これが「ワンポイント・グラウンド」です。




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#トランスからの漏れ磁束 #漏れ磁束の方向
(4/3/2018)武        

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作者: 藤原 武 Tak Fujiwara