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スイッチの接触信頼性


接触部品の信頼性については書きたいことが山ほどあります。 でもまあ重要な事柄のみに絞ってみます。

右の絵はタクタイル スイッチと呼ばれるものですが、接触不良事故が特に多い種類なので代表者として取り上げてみます。
6mm 角の大きさで、内部に皿を伏せた形のベリリウム銅か燐青銅があり、上から押されるとスナップアクションをおこして、下にある2つの接触電極をショートする仕掛けです。

機構上の問題として直ちに気がつくことはワイプ構造が無いということです。  接触点が当たったときに、わずかにこする構造がないと信頼性は格段に低下します。  もちろん流す電流と金属の性質によって信頼性は変動しますが、電子回路で一般的な電流値(1mAといった値)ですとワイプは是非ともほしいところです。

この部品の2つ目の問題点はハーメチック構造でないことです。  気体(酸素、亜硫酸ガス、硫化水素ガスなど)が自由に出入りできます。  水の分子も全く問題なく接点周りにたどり着きます。 この状態ではコロージョンを起こす金属はアウトです。  長期の信頼性ががた落ちになります。

3つめの問題はまさしくその接点金属の腐食性です。  このパーツに使用している金属は家庭で使う環境で、3年あたりからどんどん悪化していく様子が経験できます。


9年ほど前に買った Sony の家庭用のラジオを持っています。  この中には18個のタクタイルスイッチが使われていますが、9個が徐々に接触不良となっていきました。  我家ではこの機械は一階の床に近い(湿度が高い)ところで使うことが多いので水の分子の影響が大きくなります。  上記の写真は不良となったものを取り外した所です。   同じパーツを使った別のメーカのチューナでも全く同じ現象を経験しています。

試しに 2 つの中を開けてみますと右の写真のようになっています。
皿のほうには目立った問題はありませんが、中央にある接触端子の表面は見事なコロージョンです。 2 つとも同じ程度でした。  黒い物質は銀の硫化物か酸化物で、青白色の物質は銅の水酸化物のように見えます。
電圧がずっとかかっていると+側がやられます。 反対側の電極はコロージョンがありません。

銅の水酸化物ですが、銀鍍金にピンホールがあると、銅と銀との接触電位差で部分電極ができ、イオン化傾向が大きい銅の方に腐食がおきるためです。


上記3つの問題を併せ持つと非常に信頼性が低下してしまう見本となっています。

[2011.1.4 追記]  
同じラジオでその後さらにだめになったものを取り出しました。 
かける電圧の極性が逆になると、コロージョンは反対側の電極で発生します。 イオンの動きが反対になるためです。


ということは、うまい避け方があるような気がします。 右図のような方法はどうでしょうか。  凸部を持った主接点の周りをガード電極で囲ってやり、それを主接点と等電位にしておきます。
そうするとガードと主接点の間はドリフトによる表面電流(イオン移動)が無くなりますから、ディフュージョンによる電流(イオン移動)だけとなり、主電極でのコロージョンの発生は格段に改善されます。
コロージョンはガード電極で発生しますが、背を低くしておけば接触に寄与しないので接触不良にはなりません。
等電位にするための接続部は細くし、また、絶縁材に埋め込んだ構造にして、表面を伝わってくる腐食の進行を遮ります。
できれば、ガード電極の材料は主電極表面よりもイオン化傾向の高い金属がいいでしょう。
また、ガード電極間にはグルーブを掘って沿面距離を稼ぐとイオンの移動量が少なくなります。

(ここで公開しましたから特許にはなりません)

そもそもこのラジオは、電源が入っていないときでもたくさんのスイッチに電圧がかかっている設計になっています。  好ましいことではありません。 典型的な、長期信頼性を無視した製品設計となっています。
本来の設計としては主電源を切ったら、その他の全部の接点から電圧を取り去るべきです。
どうしても電圧を与えておかねばならない場合は、電圧を低くしてやるといいでしょう。  また、私がときどきやる設計では、50ms の期間に 500us だけスイッチに電圧を与えて、その瞬間だけで ON の判定を行うということをやります。  信頼性は 10 倍以上になります。
主電源スイッチはもちろんコロージョン耐性のあるものにしておかねばなりません。