サレンキーフィルタとオペアンプ
以前の記事「2種類の Sallen-Key 2次フィルタ」の注意書きで、
TI の文書をリンクしておきました。
かなり大きな誤差を伴いますのでちゃんと書いておいた方がよいと思いこの記事にします。Sallen-Key 型のフィルタは、オペアンプの帰還を使うことが多く、そのオペアンプの周波数特性と出力抵抗は大きな影響を及ぼします。
右の図を見ていただくと、何を言いたいかおよそ想像してもらえると思います。
上側は単純な 2 pole の Low-pass フィルタですが、+1 のバッファは一般的にはオペアンプで作ります。 それを詳細に見てみると右の図のような内部のパラメータがあることが分かります。
Ro は出力抵抗です。 裸ゲインが下がってくると、これは外部から見えてきます。
Co は高域のゲインの低下を直線的に落ちると仮定してモデル化したものです。 A0 は直流での裸ゲインです。
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それでは実際の値を入れてみてどれほどの影響になるか計算してみましょう。

10kHz のバタワースフィルタを設計します。 C の値を標準値から選べるようにして、かつインピーダンスレベルを 10kΩ 程度にしてみると次の値になります:
R1 = 8.583 kΩ
R2 = 59.62 kΩ
C1 = 0.0015 uF
C2 = 330 pF
理想的なバッファを使ったとすると右のような 12dB/oct の特性を持ったフィルタが得られます。

TI のオペアンプ TL071 の裸ゲイン特性は右のようになっています。
A0=106dB, FT=3MHz です。 このカーブから Co を求めると 0.0106F 程度になります。
なお、ゲインが 0dB になるところまで 20dB/dec で落ちているものと仮定しています。 以下、他のオペアンプも検証しますが、すべてこの仮定を使います。
TL071 の出力にはショート時の保護用に 192 Ωが入っています。 (エミッタの出力インピーダンスは無視しました)

これらをすべて要素に入れて計算してみると右のような特性になります。
100kHz から上で予想もしていないようなばたつきが見られます。

TI の NE5534 で計算してみます。
FT=10MHz, A0=100dB, Ro=15Ω としてみました。
右の図です。 ずいぶん良くなりましたね。
Ro が低くなったことが、右端の台地が低くなることに寄与しています。 また、FT が高くなったことは右下がりの傾斜が下の方まで伸びることに寄与しています。

最近発表になったばかりの National Semiconductors の LM4562 (LME49720) だと右のようになります。
FT=55MHz, A0=120dB, Ro=13Ω の仮定です。
さらに改善されました。

これらのグラフは実験の結果ではなく、計算結果です。 お断りしましたように、オペアンプ内部の遅延は単純な1次の形式で代用しましたから、実際には少し異なったカーブになるでしょう。 しかし傾向は正しいと思います。
意外に低い周波数で大きな影響があることが分かります。
計算してみると分かりますが、FT が高いほど、また Ro が小さいほど影響が少なくてすみます。 A0 はあまり影響しません。

右のような多重帰還型のフィルタの場合は、C1 によってあらかじめ高域が減衰していますので、上記のような誤差はでなくなります。 Ro は R2 と C2 を下側からドライブするときに若干の影響をもたらしますがあまり気にするほどではありません。
[計算]

e3 = e2*ZC2/(R2+ZC2)
e2 = ei*(ZC1//(R2+ZC2))/(R1+(ZC1//(R2+ZC2))) + eo*(R1//(R2+ZC2))/(ZC1+(R1//(R2+ZC2)))
et = (e3-eo)*A0*ZCo/(1+ZCo)
eo = (et-e2)*ZC1/(Ro+ZC1) + e2
以上から e2, e3, et を消去して eo/ei を出します。 係数は一義的に決まるものを単純化して
A = ZC2/(R2+ZC2)
B = (ZC1//(R2+ZC2))/(R1+(ZC1//(R2+ZC2)))
C = (R1//(R2+ZC2))/(ZC1+(R1//(R2+ZC2)))
D = A0*ZCo/(1+ZCo)
E = ZC1/(Ro+ZC1)
と置くと、入出力伝達関数 eo/ei は次のようになります。
eo/ei = (ABDE - BE + B) / (1 - ACDE + DE + CE - C)
[11/3 追記]

念のためオペアンプ内の2つ目のポールがどの程度影響するか、調べておきました。
右の図は TL071 の裸のゲイン・位相特性です。 2つ目のポールは 5MHz 辺りにあることが位相から読みとれます。 それを使って式を変形して計算すると下のようになります。

予想通り大きな変化はありませんでした。 5MHz 付近がわずかに持ち上がった程度です。
