NF ループの時間遅れは重大

図1は3段の低周波増幅器です。
今回の話は NF ループの話ですので、ディスクリートのトランジスタで組んでも、オペアンプの IC で作っても、似たような結論の内容になります。
図1では、R1と R3 を使って終段のバイアス点を設定し、R3 と R1//R2 で目的周波数におけるゲインを決めています。
この、A点とB点に注目します。
話の前提として、このアンプの裸ゲイン (Bが交流的に接地されているときのゲイン)を 40dB、仕上がりのゲインを 20dB とします。

仮に、出力が 10V ピーク ですと、通常の動作の時は A が 1V ピークで振っています。 AB 間は 10V の -40dB ですから、0.1V ピークの差があります。 それほど大きくはありません。
「通常の動作」 と言ったのは、A から出力までの時間遅れが無視できる周波数帯での動作のことです。
それでは、無視できない状態ではどうなるでしょうか。 A に立ち上がりの速いパルスを入れます。 Q1、Q2、Q3 を通って、一定の時間遅れがあり、出力に反映されます。
図3を見てください。

赤い線がAの電圧です。
青い線は出力に出た値を、R3、R2、R1 で分割した値です。 横軸に時間を取っていますから、赤い線から右にずれています。 ただずれるだけでなく、高周波では反応が鈍くなりますから、立ち上がりがなだらかになります。 一定時間経つと、定常時の AB 差に収まりますが、この過渡時は問題が発生します。
茶色の線は過渡時の AB の差を書き出したものですが、通常は小さい値であるのに、この期間だけはとんでもなく大きくなります。
以上は非常に単純な説明でしたが、本当は、AB の差がさらにループで帰ってきますから、B の波はもっと複雑で、減衰振動をする場合が多くあります。
ここではそれは追求しませんが、パルス立ち上がりで、B が遅れるため、A-B 間に巨大な電位差が現れることだけに注意してください。
さて、この大きな値は、ベース・エミッタ間に与えられるのですが、あいにくそこは PN 接合のダイオードです。 これはヤバイ。。。。。
順方向に大きな電流が流れ、A 点 のバイアスは本来あるべき値に対して大きく負に振れます。 このバイアスの崩れは、入力カップリングキャパシタ(図1のC)に蓄えられ、その後定常に移行してから、RC 積に従って元に戻っていきます。 これは長い時間になります。
出力には大きなパルス音が発生することになります。
時間ドメインで考えてみましたが、周波数ドメインで考えるとどうなるでしょうか。
通常の周波数の入力からどんどん高い方にスイープしていきます。
B 点は次第に入力波形に追いつけなくなっていきます。 位相が A が先行して、B が遅れますから瞬時電位差が開いていきます。 上に振るときは、ダイオードが順方向になりますから A は上がりにくい状態です。 下に振るときはダイオードが逆になりますから、素直に落ちます。 すなわち、検波されて、A は直流として負に振ることになります。
出力は、周波数が上がるにつれてバイアスがどんどん負の方向に移動してゆき、ついにはグラウンド近くにへばりつきます。
ループが反応できないような高い周波数の信号が入ってくると、バイアスが狂い、とんでもない出力が出てしまう、ということです。
近くでモータの電源を切ると、高い周波数のノイズが発生します。 これがケーブルを伝わってアンプの入力まで達すると、そのエンベロープが可聴域のノイズとして出力に出てくることになります。
A の側だけでなく、B の側も気を付けてください。 スピーカラインはアンプの出力側ですから、その線から入ってきて B に潜り込むこともあります。
どうすればいいでしょうか?
高い周波数の信号が入ってこなくするか、入ってきてもベース・エミッタ間にそれが見えないように工夫することです。
こんなことはなかなか学校では教えてくれないですねえ。
あなたのアンプの近くで電気掃除機のスイッチを切ったとき、「パシッ」 というノイズが入ったりしませんか?
また、レコーダや電子楽器のそばで無線機を使うと RFI を受けることがありませんか?
