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低周波、高周波のちがい


中学生時代、並4ラジオを作っていた頃は 1MHz は高周波の分野でした。  思い返すと、多分 100kHz 程度から上は高周波の感覚だったと思います。

今では 1MHz は低周波の感覚です。  なぜ変わったのかを考えますと、どうやら「配線導体の寸法が問題になる様な周波数」を高周波に分類しているからだと思います。  部品が小さくなって、配線長が短くなってきたのが原因です。 あ、部品が持つ本来の特性以外のパラメータも小さくなりますね。  C や R が持つ L とか。 これらも寸法が起因です。
配線の周りの電磁界空間を考慮せざるを得なくなったときも高周波を取り扱う心構えに切り替わります。

右上の図は 3cm の導体の片側をグラウンドしたときの概念ですが、A 点から導体をのぞき込んだインピーダンスは 1kHz ではほぼ 0Ω でしょう。  ところが 2.5GHz 付近では非常に高いインピーダンス( 1kΩ 以上)を示します。  1/4λ の線路は 0 を無限大にするインピーダンス変換回路なのです。 
5GHz まで上げると逆に非常に低い値になります。 


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マイクロ波の製品でちょっと面白いものをご紹介しましょう。 寸法が重要な役割をしている典型的な例になります。

右の図は一般的なパッチアンテナです。  アンテナというと普通は地上からできるだけ高く張ったワイヤを思い浮かべますが、パッチアンテナはグラウンド面すれすれに設置するものです。  ですから、金属表面にアンテナを置きたいときには重宝する構造です。  この図では 2.45GHz の周波数に対して 1/40 波長程度の高さに置いています。  誘電体を挟んで、グラウンド面と 1/2波長の四辺形のアンテナを配置してみました。  アンテナの一辺の中央から 1/4波長の整合回路を介して 50Ωのマイクロストリップにつないでいます。

このパッチに乗っている波を観察しますと右のようになります。 赤い部分が電流が大きい所です。 きれいに乗っていますね。  この図の上の辺と下の辺では電圧が逆になっています。  その辺の真下にあるグラウンドとの間でスリットを形成して2つの逆極性のスリットアンテナが存在している格好になっています。
赤い帯の部分は電流が大きく電圧が小さいですから、インピーダンスが低くなっています。  上下の辺では逆にインピーダンスが高くなっています。 ですから、そのあいだのどこかで 50Ωになる場所があるはずです。  そこに同軸をつなぐと整合回路が無くてもマッチングが取れます。 下のようにグラウンド面に穴を開けてつなぎます。

2つの給電方法をお見せしましたが、他にもたくさん給電方法があります。 


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いまはやりの RFID のチップをこのアンテナに付けてみることにしましょう。
チップを伝送線なしで直接アンテナに接続しますので物理的な位置関係が問題です。 グラウンドとアンテナ面に段差があります。  スルーホールを使ったり、フレキシブルケーブルに付けて誘電体を巻いて挟んだり工夫が必要ですね。  コストアップになってしまいます。

そこでこんな形状を考えてみました。 右の図です。
上の電流の分布図でも分かりますが、右図の一点鎖線の部分は電圧が低いのでグラウンドとして使えます。  そこで、給電点の一方をここにつなぐことにします。
RFID のチップは容量性のインピーダンスを持っていますので、アンテナと整合させるには誘導性のインピーダンスを持たせた構造が必要になります。  一定長さの伝送路を用意し、これの片方を給電点の他方とします。  伝送路を調整して、所望のインダクタンスとレジスタンスを発生するようにします。  2つの給電端子は平面上にありますから、フリップチップで直接接合させることができます。

できあがった構造の電流分布を見てみると下のようになります。

かなりうまく波が乗っており動作することが分かります。

さてここで寸法のことですが、パッチアンテナの大きさは、図の上下方向で 1/2 波長です。  誘電体の比誘電率を 3.2 としましたので、その平方根である 1.8 分の 1 になりますから、およそ 3cm の大きさになります。

整合を取るために開けた四角い穴と、その中にある整合線路の大きさは 1cm とかそれ以下の話になります。
シミュレータを動かして整合させていくとすぐに分かりますが、右図の S、W、L の寸法は 0.1mm 単位の調整が必要になってきます。  これらを変化させるとインピーダンスの実数部分と虚数部分が動きますので合わせ込むわけです。

低周波の設計では思いもよらないやりかたですね。
高周波というのは、配線が分布定数になって、長さや幅を気にしなければならない領域なのです。  集中定数の部品の世界とはずいぶん異なります。




[余談]
実はパッチアンテナには帯域が狭いというハンディがあります。  このため UHF の RFID をパッチアンテナを使って国際的な物流に適用したい、と思ったときはなかなか難しい問題に直面します。
ヨーロッパとアメリカでは周波数が離れていますし、おまけに日本はもっと上の方にありますのでとても広い周波数をカバーしなければなりません。

上記の最後の整合回路は、直流的には RFID チップの両端子をショートする構造になっています。  チップによってはショートすると動作しないものもありますから、その時はもう少し工夫をします。


[余談2]
寸法といえば、さらに上がって 10GHz 位になりますと非常に厳しくなってきます。  波長が 3cm ですので、7.5mm は無限大と 0Ω の開きになります。  測定などで影響を出さない距離は 0.5mm 位のサイズになりますから、機械加工にも芸術的なセンスが求められます。
右の写真は私のアイデアを生かして作って頂いた同軸状のプローブヘッドです。  (残念ながらこれはグラウンド側のストロークが取れなくて失敗作です。)
鉛筆の芯 0.5mm と比較してください。


[余談3]
パッチアンテナの図の中に 「λ/4波長整合回路」というものを書き込んであります。
これは「Qマッチング」とよばれる方法です。  もちろん λ/4 は電気波長で、同軸なら 75%位に短縮された物理的な長さです。
λ/4 整合回路の出口に Z1 Ωの実数を持った負荷があり、整合回路の伝送線インピーダンスが Z0 であるとすると、 入力端子側から見込んだときのインピーダンス Z2 は次のような式で表されます。

  Z2 = Z0^2 / Z1

この原理で Z1 のパッチアンテナに 50ohm の給電線をつなぐときに、電気長がλ/4 の長さで、
伝送線インピーダンスが SQRT(50*Z1) のストリップラインをかませるとマッチングがとれるわけです。


[注意]
パッチアンテナで紹介した最後の整合方法は特許が公開されていますので、そのまま無断で使用なさらないように。