車の静電気ショック防止
冬の間、車から降りてドアを閉めるときに、静電気のショックが来るのはいやなものです。簡単な仕掛けで防止できるのですが、メーカーはそのようなものは組み込んでくれませんね。 私はホンダに乗っていて、営業マンに提案したのですが、「ホンダでは提案をメーカーに上げる仕組みがない」そうです。
仕方が無いので自分で加工しました。
[感電の原理]
車から降りるときに、座席で身体の向きを変えたり、立ち上がるときに衣服とシートとが強くこすれます。 この時に帯電します。
路面に立ったときは、靴底が皮革なら弱い導電性があるので 10ms もあれば放電してくれます。 でも最近の靴は樹脂の底ですので絶縁性が高く静電気は逃げません。 帯電したままドアなどの金属部分に触りますと、高い導電率ですので大きな電流値になって、神経が一瞬麻痺します。 これが感電です。
電圧は 1,000V から 10,000V 程度で、人の静電容量は 100P から 300PF 程度です。 2,000V で 150P だとすると 0.3uC です。 たいしたことはありませんが、人体の指先の皮膚の抵抗が 100kohm (今測ってみました)とするとピーク電流は 20mA になります。 高圧の場合は薄い皮膚は飛び越えて内部に直接放電しますから、実質はもっと低い抵抗になります。 多くの ESD の試験装置では人体モデルとして 150pF で 1.5kohm を使っています。 (指を生理的食塩水で濡らしてみるとその程度になります。) その値で計算すると 1.3A ですね。
この電流が広い領域(断面積)で流れてくれると感電ショックは弱いのですが、触ったときは 1mm平方以下の狭い領域ですので電流密度が大きくなってショックがひどくなります。
[対策]
右の写真のようなものをドア近くに貼り付けました。
電荷を高い抵抗(低い導電率の物体)で逃がしてやると、電流値が少なくなり、ショックがなくなります。 まあ 0.2mA 程度以下にしてやるといいでしょう。
2,000V で 0.2mA なら 10Mohm になります。
あまり高い抵抗値ですと放電に時間がかかってしまいますが、300pF で 10Mohm の場合ですと時定数は 3ms ですから、30ms もあれば十分放電してくれます。
つまり、抵抗値は:
1.電流が、ショックが来るよりは低い値になるように、大きく かつ
2.ちょんと触る時間内で充分放電する短い時定数を持つように、小さい値にする
ということです。 これはかなり寛容な幅になります。 おおざっぱに言って、5Mohm から 100Mohm の範囲ぐらいでしょうか。 あまり大きいと断線の故障率が大きくなりますから、10M 辺りが妥当でしょう。
抵抗は耐候性を考えて熱収縮チューブを二重にかぶせています。
導電テープは接着面も導電性のあるものです。
==注意== この抵抗には高い電圧がかかりますので、高電圧用の抵抗が必要です。 例えば YAGEO の HHV-50JT-52-10M は Overload Voltage として 7kV に耐えます。 タクマンの RMG25 は YAGEO の 1/10 の 700V しか耐えないので、抵抗体の溝で放電が発生しショックが来ることがあります(経験済み)。 また抵抗までのリード線と抵抗器本体はシャーシから十分絶縁しておくことが必要です。
アクリル板の沿面距離は 9mm 位あります。
なお、日本の硬貨を加工すると犯罪になります。
外に出たら、ドアに触れる前にこの1セント玉にちょんと触ってやります。 2週間ほど使っていますが、ショックは皆無になりました。

[靴屋さんに希望]
靴底にわずかな導電性を持たせて、低電流でゆっくり放電するようにしてもらえると助かるんですけどねえ。
あ、いま、ここで言及しましたから特許にはならないです。 (2016.3.24)
[次善の策]
抵抗の大きな物体で接地するといいのですから、降りたところに木の柵なんかがあると、それに触れるのもいいでしょう。
また、上で少し触れましたが、電流密度を下げるとショックは和らぎます。 で、触れる前から指で触る面積を広くしておく方法を考えます。 たとえば、車のキー(今はそんな物は無くなりましたが)をできるだけたくさんの指でつかんで、そのキーでシャーシーに触れるとかなりショックが下がります。

2020.03.05 追記:
私の声がホンダに届いたのかどうかわかりませんが、ホンダがオプションパーツを売り出しました。
右の絵です。(ホンダカタログから)
