チャンネル・デバイダー
Forum で興味深い質問 をいただきましたので、マルチスピーカ・マルチアンプの周波数分割フィルタの形式についてちょっと考察しておきます。フィルタの遷移域の特性の比較です。
いずれも 12dB/oct の、Butterworth と Linkwitz-Riley と 山中式の3つを取り上げてみます。
まず山中式から:
LP= (5.25S+1) / (S^3+5.25S^2+5.25S+1)
HP= (S^3+5.25S^2) / (S^3+5.25S^2+5.25S+1)
または変形して、
LP= [ (5.25S+1) / (4S+1) ] * [ 1 / ((0.5S)^2+2.5*0.5S+1) ]
HP= 1-LP
式は上の通りです。 別々の2つのフィルタで作ってもいいのですが、山中氏は変形式のように LP を作った上で、 HP は原信号から LP 出力を引き算して作る方法(またはその逆)を提唱されています。
これの特徴は、電圧の伝達関数の和が位相まで含めて 1 になることです。 (電力の和ではないので注意)
伝達関数を計算してみました。

周波数特性としては、切れが悪いのが気になります。 スピーカのあばれをうまく排除できないでしょう。
デバイダの目的はスピーカの暴れている特性部分を避けて別のスピーカにバトンタッチすることです。 この切れ具合では目的を達成できないだけでなく、振動系まで含めた合算伝達関数は非常に異質なものになります。
ネットワークだけで見たときは、電圧の和と位相の和はきれいに元通りになっています。
ところが、電力の和を計算してみると 2dB の盛り上がりがあることがわかります。
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続いて Linkwitz-Riley:
LP= 1/ (S^2+2S+1)
HP= S^2 / (S^2+2S+1)
これの特徴は電圧の合算がどの周波数でも 1 になることです。
ただし、どちらかのチャンネルの位相を反転しておかねばなりません。 計算ではハイパス側を反転させました。 上と同様の計算をした結果が次の通りです。

山中式と同様に電力の合算は1になりません。 この場合は 3dB の落ち込みがあります。
切れは山中式よりははるかに良好です
周波数が高くなると位相が遅れることはあまり問題だとしないのですが、それでも補正したい人は複雑な回路を考案するかもしれませんね。 伝達関数は (1+S)/(1-S) です。
私が勝手に考えた回路が下の2つですが、これらは残念ながら動作しません。

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最後に Butterworth:
LP= 1 / (S^2+1.4142S+1)
HP= S^2 / (S^2+1.4142S+1)

Linkwitz-Riley と同じく、どちらかを逆相にします。 計算ではハイパス側を反転させています。
電圧の合算は 3dB の盛り上がりがありますが、電力の合算はフラットです。
LP と HP の間を少し広げてやると Sum-V がフラットになるように思うかもしれませんが、そううまくは行きません。
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3次を使ってみると:
以上は2次のフィルターでの比較でした。
電圧の合計も電力の合計も1になるものがないか、一生懸命考えました。 ありました。 3次のバタワースです。
LP= 1 / (S^3+2S^2+2S+1)
HP= S^3 / (S^3+2S^2+2S+1)
で計算してみましょう。

残念なことに、位相は 360 度まで遅れていきます。 この位相遅れはなめらかですので、実験結果としては人間には分からないとされています。
このフィルターは切れがいいのでコーン紙の副共振を避けることができそうです。
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相対的位相シフト:
ここでちょっと問題かもしれないことに気が付きました。 ウーファの振動の位相を基準として、ツィータの位相がどう進み遅れがあるかをみてみました。

Linkwitz-Riley と2次のバタワース(どちらも片側位相反転済)はどの周波数でもきれいに同相で駆動されています。
山中式は周波数によって位相が異なり、180度から111度まで変化します。 これは何か問題になりそうです。 周波数の両端では片方のスピーカの振幅は減衰していますから問題ではないですが、w=1 あたりでは空気を押し出すのにツイータが進んでいるのです。 それも、大幅な進み。
うまくすると、この進みは w=1 での 2dB の盛り上がりを帳消しにしてくれるかもしれません。
3次のバタワースは定常的に 90 度の遅れがあります。 この遅れがあるから電圧の合計も電力の合計も1になるのです。 うーん、どういう問題になるか、ゆっくり考えてみましょう。 何か思いついたらここに追記します。
