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利得とバンド幅


帯域の広い増幅器を作るときは、ゲインをあまり稼がないようにします。 ゲインもほしいときは、数段に分けて増幅します。

大学の、たしか2年の時だったと思いますが、6N6 という GT 管を使って増幅器を設計するという宿題が出ました。  「なんだ、簡単だ」と思って1段のアンプを設計して検証すると、なんと帯域が足りません。 この時は少しあせりました。  Terman の教科書をよく読んでみると、どうすればいいかわかりました。

その辺りを、2つの例を取り上げて見てみましょう。 
下の回路は、比較的低速のオペアンプである TL071 を使って実験したものです。 ゲインを3つ切り替えてステップ応答をとってみます。
ゲインを高くすると立ち上がりが遅くなることがわかります。
Gain Rise Time
(63.2%)
BW
  20dB 0.524us 304kHz
40dB 5.6us 28.4kHz
60dB 58us   2.74kHz

立ち上がり部分を拡大して、63.2% まで上がる時間をくわしく測定して、帯域に換算してみますと、右の表のようになりました。  63.2% というのは [ 1-1/e ] の値です。 その逆数を 2π で割った数字を BW としています。
ゲインが 10 倍になると、バンド幅はほぼ 1/10 になることがわかります。 

それをグラフにしてみると右のようになります。 
黒の細い線は TL071 の仕様書に書かれてあるオープンループゲインの線です。 右下がりのスロープ部分は実験結果と仕様書がよく一致していることを表しています。 

帯域がほしいときはゲインを稼いではいけないことがわかります。 

このオペアンプを使って、40dB で帯域が 100kHz のアンプを作るときは 20dB の2段で増幅してやります。 1段の時と比較すると、右の絵のようになります。 
(実際にはもっと帯域を広く設計しないとひずみ率は下がりません)



もう一つ例を見てみましょう。

右の回路は簡単な低周波増幅回路ですが、トランジスタ内部にある接合部分の浮遊容量を赤で記しています。 ドレインとゲートの接合は PN の逆方向バイアスが比較的深いので 2.8pF としてみました。 これは 2SK30A のグラフから Vdg が 5V の時の値をとってきました。 Ci はバイアスを 0V として 7.5pF としてみました。 gm は実数で 3mS としています。 ドレイン・ソース間の浮遊容量はあまり効かないので 0 としました。 交流出力コンダクタンスは 0 としています。
Rg はトランジスタ内部の抵抗分ですが、Rsig と併せて 1kΩ として計算してみます。

RL を 10k と 1k の場合両方でグラフを描いてみますと下のようになります。





もちろん 10k を使うには Vdd を 40V 程度に高くしなければなりません。 グラフにある RL=1k のときの 20MHz 付近の持ち上がりは、 Ci に並列に 1pF を入れると落とせます。

この例でも、帯域を稼ぐにはゲインを犠牲にすべきことがわかります。

なお、Cs と Ci がどのように効いているかについては、日を改めて別途お話しすることにしますが、Cs の方がほとんどを支配していると思ってください。


ところで、TL071 のグラフを見ると、どのゲインのアンプを設計しても、高い周波数では右下がり 45°の線に漸近していることが読み取れます。 この右下がりの線上では、( 45°ですから)ゲインと周波数をかけた積は一定になります。 この値のことを「GB積 (Gain-Bandwidth Product)」といいます。  素子の良し悪しを評価する指標のひとつです。  45°の直線のままゲインが1の所まで下がるときは、このGB積は「Transision Frequency (FT)」と一致します。
TL071 の場合は一致していて、その値はグラフから読み取ると 3MHz です。