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OpAmp Noise の考え方、 どちらの入力を使うか


反転増幅か非反転かを問わない増幅をするとき、オペアンプのどちらの入力を使えばいいのでしょうか。 一般的には非反転(+)が使われています。
ちょっとノイズの観点から考えてみましょう。

下の図は、インターシルの技術資料です。



K はボルツマン常数(1.38*10^-23 J/K)、T は絶対温度です。 最後の R3 ジョンソンノイズのゲインが空白になっていますが、 1+R1/R2 です。 最下行の最初の部分が読みにくいですが、バンド幅のルート(√BW)です。  どれも √1Hz 当たりの値ですので、最後に掛けられています。
図中の上から5行目の Vn+ は間違いで、 In+ です。

In と Vn の場所ですが、In については2つの入力の双方に入れます。 Vn については + 入力(のみ)に入れるのが一般的ですが、- 入力側に入れても同じ結果になりますので、そうする場合もあります。 片側だけです。

すべて理論値ですので、実際には少し異なります。 たとえば、RC 積による高周波域でのノイズの低下などが考慮されていません。 また、オペアンプの初段トランジスタが出すポップコーンノイズも議論されていません。 さらにフリッカノイズが 1/f 特性を持っていることも考慮されていません。
式を見ると、まあ当然のことが書かれていますが、ノイズを3種類に分けていて、
  Input Voltage Noise
  Input Current Noise
  Johnson Noise
となっています。 正しい考え方です。

In- のゲインが 1 であることに惑わされて「反転の方がノイズが少なそうだ」と思われます。 おまけに、反転なら R3 が 0 にできますから、これも良さそうです。 でも、ちょっと待ってください。 実際に抵抗の値を入れて反転と非反転の比較の計算をしてみましょう。 入力インピーダンスを高くするために R2 を大きくすることが多く、そのときは R1 を増幅率倍にしますから、ここはよく考えて。

まず定電圧性の信号源の場合です。

入力インピーダンスが 100kΩ で、 20dB のゲインのアンプを比較します。
信号源インピーダンスは 100Ω とします。
ノイズ電流は + も - も 0.1pA とします。
温度は 300K とします。
抵抗やトランジスタにはそのほかの原因による雑音発生は無いとします。
バンド幅は 100kHz とします。
オペアンプは 10kΩ が駆動できるとします。

元式の中の、Vn に関しては反転も非反転もほとんど同じで0.1% の差しかありませんので比較を省略します。

電流雑音は次の通りです。

反転増幅の時:
Von=SQRT(100E3)*(0.1E-12*1E6) = 3.16E-5  (V)

非反転増幅の時:
Von=SQRT(100E3)*SQRT((0.1E-12*9E3)^2+(0.1E-12*(100//100E3)*10)^2) = 2.86E-7  (V)

非反転の方が遙かにノイズが小さくなります。 これは信号源インピーダンスが低いことが寄与しています。  (//は並列のインピーダンスを表しています)


ジョンソンノイズ(熱雑音)は次の通りです。

反転増幅の時:
Von=SQRT(100E3)*SQRT(4*1.38E-23*300*(1E6+100100*(1E6/100100)^2)) = 1.35E-4  (V)

非反転増幅の時:
Von=SQRT(100E3)*SQRT(4*1.38E-23*300*(9E3+1E3*9^2+(100//100E3*10^2))) = 1.29E-5 (V)

こちらも非反転の方が小さいことが分ります。 これも信号源抵抗が小さいことが寄与しています。
また、帰還回路を低抵抗とすることができるのも寄与しています。
カップリングキャパシタがあると、低い周波数で Rs が効かなくなって R8 の熱雑音も電流雑音も増加しますからその値の選択に気を付けてください。 ですから、信号が小さいところで、低域をカットするフィルタにカップリングキャパシタを使うことはお勧めではありません。 NFB 回路を使った方がいいでしょう。

定電圧性の信号源の場合は、非反転入力が有利です

信号源インピーダンスが小さいことが寄与した、というのですから、定電流性の信号源の時はいったいどうなるのでしょうか。



では定電流性の信号源の場合を考えてみます:

このときはやや複雑なことを考えねばなりません。 定電流源のインピーダンスは高いので、電圧を振る回路では、浮遊容量があるととたんに帯域が狭くなってしまいます。 ですから受ける回路はインピーダンスを低くしてやる必要があります。
反転増幅では、入力は仮想グラウンドに近くなりますから、問題はまあ無視できるほどになります。 非反転回路では電圧を振ることになりますから、低い抵抗で受けます。

入力インピーダンスは 1kΩ 以下とします。
ゲインは 100kΩ とします。 電流分の電圧ですから単位はΩになります。 1uA の変分に対して 0.1V 出る、ということです。
信号源抵抗は 100kΩ と仮定します。
Vn は 10nV/√Hz と仮定します。
バンド幅などの仮定は定電圧信号源の場合と同じに取ります。

Vn と In と R を起源とするノイズはそれぞれ以下の表の通りです。
Vn 起源 In 起源 R 起源
反転増幅の
ノイズ出力 Von
319*10E-9*2

= 6.38E-6
319*0.1E-12*100E3

= 3.19E-6
4.10E-8*SQRT(100E3
+100E3*4)

= 2.90E-5
非反転増幅の
ノイズ出力 Von
319*10E-9*101

= 3.22E-4
319*SQRT(
(0.1E-12*100E3)^2
+(0.1E-12*1E3)^2
)

= 3.19E-6
4.10E-8*SQRT(
100E3
+1E3*10000
+990*10201
)

= 1.84E-4

こうしてみると、定電流信号源の場合は反転増幅のほうがはるかに低雑音であることが分ります。 これはひとえに、R8 を小さくしたことが悪さをしているのです。 R8 が小さいため Rs との電流分割で、信号源の電流が有効利用できず、 R6/R7 比を大きくしなければならなかったのが原因です。 だからといって R8 を大きくするとその周りの浮遊容量によって帯域が一挙に狭くなります。 また、Rs はトランスジューサの個体差があるときは直接ゲインの誤差になりますから R8 は大きくできません。


この反転増幅回路のことを トランスインピーダンスアンプ といい、定電流トランスジューサからくる信号に対して、広帯域で低雑音のアンプとして使われます。
ゲインが電流分の電圧ですから、インピーダンスの元(げん)になり、また、その2つの値が別々の場所のものなので、トランスというわけです。


ちょっと余談になりますが、トランスインピーダンスで思い出しました。
真空管の重要なパラメータに、入力(グリッド)電圧の変分に対する出力(プレート)電流の比があります。 これを相互コンダクタンス(ミューチュアルコンダクタンス)と呼び、 記号を gm で表します。 g はコンダクタンスを表す記号 G から来ています。 m はミューチュアルの意味です。 トランスインピーダンスと似ていますね。 今でも FET で使われています。

でもちょっと変です。。。。。
昔の言い方を踏襲すると、トランスインピーダンスではなく、ミューチュアルレジスタンスと言うべきではないでしょうか?



[参考文献]
"Fundamentals of Low-Noise Analog Circuit Design"
Proceedings of the IEEE, pp.1514-1539, Vol. 82, No. 10, Oct. 1994